サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、「大量生産・大量消費・大量廃棄」といった従来のリニアエコノミー(直線型経済)とは異なり、資源の再利用や再生を通じて経済活動を行う仕組みです。この変革期においてはの人事管理は、以下の3つの点に留意する必要があります。
1 新しいスキルセットの育成と評価
サーキュラーエコノミーでは、製品設計、リバースロジスティクス(回収・解体・再利用)、資源管理、サプライチェーンの透明性確保といった新しい業務が生まれます。
人事部門は、これらのスキルを社員に身につけさせるための研修プログラムを策定し、実施する必要があります。また、従来の売上や利益だけでなく、資源の節約量、CO2排出量削減といった循環経済に貢献する指標を人事評価に取り入れることで、社員の行動変容を促すことが重要です。
2 多様な人材の獲得とエンゲージメント向上
サーキュラーエコノミーを推進するためには、従来の製造業や小売業の枠を超え、素材科学者、環境コンサルタント、リサイクル技術者、サステナビリティ専門家など、多岐にわたる専門知識を持つ人材が必要です。
人事部門は、こうした多様な人材を惹きつけ、定着させるための採用戦略を構築する必要があります。また、社員が自社の循環経済への取り組みに誇りを持てるよう、社内での情報共有を密にし、エンゲージメントを高める施策を講じることが、離職防止につながります。
3 組織文化の変革と協働の促進
循環経済への移行は、特定の部門だけでなく、全社的な意識改革を伴います。人事部門は、部門間の壁を取り払い、設計、製造、販売、物流、経営企画など、異なる部署の従業員が連携して循環型ビジネスモデルを構築できるような協働体制を支援する必要があります。
例えば、日本企業が得意とする異動やプロジェクトチームの編成を通じて、社員が部署横断的に学び、行動する機会を提供します。これにより、全社的なサーキュラーエコノミーへのコミットメントを高め、組織全体で持続可能な価値を創造する文化を醸成します。
これらの対応は一時的な環境対策ではなく、企業がサーキュラーエコノミー時代を生き抜くために、今後の競争力強化に直結します。

賃金システム研究所🄬所長 賃金改革のプロ・プラチナ企業育成のマイスター🄬
主な著書:「新訂2版 賃金システム再構築マニュアル」、
「赤津雅彦の賃金改革キーワード」、
「伸びる組織のための人事・賃金基礎講座」等
(注)「プラチナ企業育成マイスター」は登録商標です。


