企業経営の目的は、株主価値の最大化ではなく関係する人々を幸せにすることであり、業績向上はその手段に過ぎない――とする新たな視点で経営学を捉え直す用語事典がこのほど刊行された。人を大切にする経営学会(坂本光司会長=写真)が2年をかけて編さん。130人を超える執筆陣が約1000の用語を解説した。坂本会長は「マーケティング戦略や商品開発といった『やり方』ではなく、経営の『あり方』に力点を置いて編さんされている」と特徴を説明する。

従来はコストとされてきた「人件費」について、同事典は「関係する人々が豊かで安定した生活を営むための、必要不可欠な目的支出」と定義。高ければ高いほど良いとされてきた「利益率」について、「重要なのは人件費や未来経費、法定外福利厚生」とした上で、「ほどほどが望ましい」とした。
目次は「企業経営のあり方」(第1章)や「社員とその家族」(第4章)、「社外社員(仕入先・協力企業)」(第5章)、「障がい者雇用」(第7章)など全12章で構成。執筆陣は、同学会の学会員である中小企業の経営者や経営幹部、新聞記者、研究者、弁護士、社労士、医師や経営コンサルタントなど多彩なメンバーが担当した。監修は坂本会長と三村聡・岡山大学名誉教授が担っている。
■表彰企業250社超
同学会では2011年から、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞と題し、「人を大切にする経営」を推進する企業を選定し、毎年表彰を行っている。応募資格には高い水準が設定されているものの(下表)、今年3月には表彰は15回を数え、受賞企業数は累計で250団体を超えた。用語事典の巻末には、全受賞企業の一覧も添えている。
「人を大切にする経営を行っている企業は、実は業績などパフォーマンスも高い」と坂本さん。「この事典が広く読まれることで、下請けいじめやリストラといった言葉がなくなることを期待している」と述べた。
