■休み「支える側」を報いる(前)
育児休業の取得者に手当を支給する企業は少なくないが、治療やリフレッシュ目的の休暇も含めて、その間に業務を代替するチームや個人に手当を出す動きがトレンドになりつつある。支える側を報いてはじめて、職場に真の一体感が醸成されるのかもしれない。
出版・アニメ・ゲームなど総合エンターテインメント事業を手がけるKADOKAWA(東京都千代田区)は4月から、育児・介護と仕事が気兼ねなく両立でき、周囲が両立を応援する風土を促進する狙いで、「産育休・介護休フォロー手当」を導入した。産育休や介護休を連続で28日以上取得した従業員が所属する部署で、業務をフォローする正社員、契約社員、嘱託社員、継続雇用契約社員、出向受入社員が対象。休職期間中に月2万円を一律で支給するもので、業務をフォローすることで休職者を支える従業員の貢献に報いる。

賃貸経営事業の大東建託(東京都港区)は4月に、「育児介護応援手当」を制度化した。周囲の従業員への気兼ねが特に男性の休業取得を阻んでいるとして、産育休や介護休業を連続1カ月以上取得する従業員の休業開始月に同じ課・チームに所属し、業務を負担する従業員向けの手当を新設。支給額については休業者の休業期間に応じて、1カ月以上3カ月未満の場合は2万円、3カ月以上の場合は3万円に設定しており、6月と12月の年2回の夏・冬賞与支給時に支給している。

真空機器メーカーの樫山工業(長野県佐久市)は4月に、休業取得の心理負担軽減と長期的なキャリア形成を支援するため、「休業支援報奨金制度」を導入した。育児休業や介護休業などを取得した従業員の業務を引き継ぎ、サポートする同僚が対象で、1人に負担が集中しないように複数人選考し、業務をできる限り公平に分担。報奨金の額はサポート期間や業務負担に応じて決まり、休業者1人当たり年間最大で66万円まで支給することで、制度利用の心理的障壁を取り除く。

無添加石けん製造のシャボン玉石けん(福岡県北九州市)は新年度から、産前産後休業や育児休業の取得者をフォローする従業員に対する手当を新設した。産休・育休取得者が出た場合に、負担増加が想定される休業者の所属する部署のメンバーに月10万円、1人当たり1万円を限度に会社から手当を支給。支給期間は休業期間中とし、人員補充が完了した時点で手当の支給は打ち切られるが、従業員の産休・育休取得と休業からの復帰も促進させる考えだ。

医薬品や食品などを製造・販売するエスエス製薬(東京都新宿区)も4月から、育児休業取得者の同僚への手当支給を開始した。育休を取得する側の「取りづらい、言いづらい」という気持ちに寄り添うため、チームメンバーが育休取得を喜んでサポートできる環境を整備。休業取得者が所属するチームメンバーに、チームの規模や育休取得期間に応じて最大10万円の支給を開始している。

独立行政法人中小企業基盤整備機構(東京都港区)も4月に、「育児休業応援手当」を創設している。同じ課・室の職員が3カ月以上育休を取得し、欠員補充がないなかで従来の業務と休業者の業務を原則3カ月以上代替して担当した職員が対象。休業者1人につき支給対象者は原則5人以内であることも要件とし、1回に限り5万円を賞与に加算して支給する。



