中小企業・小規模事業者の価格交渉をめぐる状況が、改善の兆しをみせている。価格転嫁のさらなる促進に向け、政府は一丸となって取引適正化の対策を強化する方針だ。
内閣官房と公正取引委員会はこのほど、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を策定。原資が確保できる取引環境を整備することで、中小企業の持続的かつ構造的な賃上げに繋げる。
指針では事業者に求められる12の行動を示し、留意事項や取組事例などを明記。発注者向けに「経営トップの関与」「発注者側からの定期的な協議の実施」「サプライチェーン全体での適切な価格転嫁」など6つの行動、受注者向けに「根拠とする資料」「発注者の価格提示を待たない希望額の提示」など4つの行動、発注・受注者双方に「定期的なコミュニケーション」「交渉記録の作成・保管」の2つの行動を採るよう求めた。
例えば価格交渉に関する行動では、発注者に受注者から労務費上昇を理由とした取引価格の引上げの申出がなくても、業界の慣行に応じて1年に1回、半年に1回など定期的に協議を持ちかけるよう要請。仮に協議なしに長年価格を据え置けば、独占禁止法の優越的地位の濫用、下請代金法上の買いたたきに該当する可能性があると指摘した。
これに対し、受注者には発注者からの提示を待たず希望価格を示すよう推奨。価格に関しては最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額や上昇率など根拠となる公表資料を用い、自社のみでなく発注先やその取引先の労務費を考慮して設定することを促した。
2023年10月時点の中小企業庁の調査では、「発注者からの申入れで価格交渉を実施」が半年前の前回調査比6.7㌽増の14.4%に上昇する一方、「希望したが価格交渉未実施」が同9.3㌽減の7.8%に低下。また「コストが上昇せず価格交渉は不要」も同8.7㌽増の16.4%に上昇しており、価格交渉が可能な雰囲気が醸成されつつあることがみてとれた。
政府は1月にも、発注者ごとの交渉・転嫁状況の評価の公表を開始。さらに評価が芳しくない発注者の経営トップに、事業所管大臣名での指導・助言に乗り出す方針だ。