懲戒処分の問題から。
「『使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことをもって足り、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない場合でも、労働基準法に定める罰則の対象となるのは格別、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずることに変わりはない』。とするのが、最高裁判所の判例である」
誤り。その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない部分が誤り。周知されていなければならない。懲戒処分の問題ではあるが、就業規則の問題ともなっている。
「労働契約法第15条の懲戒とは、労働基準法第89条第9号の制裁と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられている」
正しい。まず、労働契約法15条は「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定める。
さらに、労働契約法15条の行政通達(平成24年8月10日基発0810第2号、平成30年12月28日基発1228第17号)は、懲戒の趣旨として、「懲戒は、使用者が企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために行われるものであるが、懲戒の権利濫用が争われた裁判例もみられ、また、懲戒は労働者に労働契約上の不利益を生じさせるものであることから、権利濫用に該当する懲戒による紛争を防止する必要がある。このため、法第15条において、権利濫用に該当するものとして無効となる懲戒の効力について規定したものであること」としている。問題文の労契法15条の懲戒は、労基法89条の制裁と同義と明確に説明している。
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