就職活動を行う学生がインターンシップや一日仕事体験を経験する割合は74%と急増しているが、その内訳は「1日以下」が8割超を占める(就職みらい研究所調査)。「5日以上」は3%と現状では少数派だが、数カ月や半年以上にわたる長期インターンで実務経験を積むケースも徐々に増えているようだ。現役学生で長期インターンを続ける西南学院大学(福岡市)人間科学部心理学科4年の里村優衣さんは、「『どこで誰と働くか』が仕事を選ぶとき重視する点になった」と手応えを話す。インターンを始めた経緯やキャリア展望の変化について聞いた。
■広報業務立ち上げ、1年4カ月継続中
――長期インターンのきっかけは
就活を始めた大学3年の春、面接時など「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)で話せるような結果を出したいという思いと、成長できる環境に飛び込みたいという2つが直接的なきっかけです。
大学に入学した2020年4月はコロナ禍が深刻化し始めた時期で、入学式もなく初年度は数えるほどしか対面で大学に行けない状況でした。一方、周囲から就職活動の大変さを聞いていたこともあり、入学後は他大学の学生と一緒にキャリアに関するイベントを企画したり、できることは積極的に取り組みました。高校生の頃にアナウンサーを目指していたことも、背中を押してくれたのかもしれません。
同年代で長期インターンをしている学生は、10人のうち1人いるかいないかと少数でしたが、先輩はじめ私の周りには割と多かったので、比較的軽い気持ちで始めました。
――インターン先について教えてください
2つの会社で有給インターンを経験しています。1つ目は人材系のA社で22年5月から現在1年4カ月目で継続中。2つ目は食品系のB社で23年1月から7月まで半年間行いました。両社ともスタートアップ企業です。
A社では、ちょうど広報業務を立ち上げる時期だったことや私の適性への会社側の判断もあり、広報PR業務に従事しています。責任者としてメディアへアプローチするなど大変な点も多いのですが、大手媒体での露出などの成果も得られています。フルリモート勤務ということもあり、自分で目標を設定して活動予定を定期的に上長や代表に共有し、動ける時間で働いています。
B社は就職活動の過程で出会い、元々インターンを実施していなかったのですが、こちらからアプローチして受け入れてもらいました。A社での経験もあり主にSNSの広報活動を担当しました。
■企業ブランド競争より「職歴」評価を
――インターン前後で自身に変化はありましたか
最も大きな変化は、「どこで誰と働くのか」を就活で重視するようになったことです。以前はみんなが知っている有名企業で働きたいという気持ちも強かったのですが、インターンを通じて自分の強みは何か、それをどんなポジションで、どんな人たちと関わりながら働けば発揮できるのか、そして今後のキャリアに役立つスキルとしてどう身につけられるのか、という部分が明確になりました。
また、元々人材系の業種に特別な興味があったわけではないのですが、インターンを続けるなかで楽しく感じる部分も増えました。「誰と働くか」という経験が、つらい時期を乗り越える力になることを実感しています。
――企業の側の変化は感じましたか
A社では、私とは別のインターン生の働きかけが実際にひとつのメディア事業として動き出し、現在インターン生が主体となって運営している事例がありました。またB社では、私に続いて別のインターン生を採用するなどの変化も生まれているようです。
――今後の進路について教えてください
他企業への就職活動も進めてきたのですが、やはり今のインターン先で自分の力が発揮できるという実感があり就職を希望しています。ただ2社とも新卒採用を実施しておらず悩ましい状況です。
――就職活動全般について感じていることはありますか
就職活動をしていると、学生同士が蹴落とし合ってるように感じることがあります。表向きは見えづらいですが、SNSなどでは陰口の叩き合いや「〇〇に受かった」などの競争もよく見かけます。
学歴や肩書きを重視する文化も影響しているのかもしれませんが、学生の間に具体的に何に努力したかをいわば「職歴」のように評価する基準ができれば、企業のブランドで一喜一憂したり、入社後のギャップによる早期離職なども少なくなるのではないでしょうか。
一定のキャリアを経験した学生が即戦力として活躍できることが、労働人口の減少という課題に対しても解決の一助になるように感じます。