面接時に「公正な採用選考」を宣言することで新卒応募者との信頼関係づくりに生かし、採用実績向上につなげている企業がある。システム開発のニップスシステムセンター(福岡市、従業員数55人)だ。採用を担当する梶原大輔・執行役員ジェネラルマネージャーは、新卒採用全般を通じ①応募者へ真実をありのままに分かりやすく伝える、②もてなす気持ちで接し楽しい時間を共有する――の2点がポイントだと指摘する。詳細を2回に分けて紹介する。
■面接冒頭で禁止事項確認 笑顔を引き出し分かること
同社は、スーパーなど棚卸サービスで国内シェア約8割を占めるエイジスグループの一社。エイジス九州の子会社で1995年に創業し、2020年7月に規模拡大に伴いシステム事業部門を分社化した。
採用は長く経験者が中心だったが、16年に新卒採用を再開。18年に担当者となった梶原さんは、労働局が実施する「公正採用選考人権啓発推進員」の研修受講をきっかけに、面接時の「公正な採用選考の宣言」(図)の取組みを始めた。応募者の人権を尊重し、出生地や家庭環境、思想信条など、適性・能力以外を基準に採否を決定しないことを宣言する内容だ。
「面接冒頭で応募者に宣言書を掲示して禁止事項の確認をはじめ、いじめたり傷つけたりしないと口頭で説明し、『楽しい面接になるよう頑張りますのでよろしくお願いします』と伝えると、その時点でほとんどの人が笑顔になります」
それは応募者のためだけではないと、梶原さんはこう続ける。
「喋ってもらわなければ考えも気持ちも分からない。笑顔の時に、応募者本来の個性が見えてくる。そのほうが本当に欲しい人が見つかるのです。面接の良し悪しは、どれだけ相手の笑顔が出たかで判断しています」
採用フロー全体を通じ、会社の良い面ばかりではなく、課題や問題点も含めたリアルな情報を開示することもポイントだ(「RJP」記事参照)。誠実な情報開示の意味でも「公正」を重視する。梶原さんは「本当のことを正直に言うだけ」という。
例えば会社説明会では、受託開発だけでなく出向業務もある点などを事前に説明し、応募者が納得いくまで質問や確認をしてもらう。面接では話しやすい雰囲気をつくり、徹底的に応募者の話を聞くとともに、会社見学の機会もつくっている。見学時は採用担当者は同席せず、前年採用の若手社員が案内することで、フィルターのかからないリアルな話を聞けるように工夫している。
「就活の主役は応募者です。企業は選んでもらうために、手を抜かない努力が重要。熱意があるか、一生懸命やっているかはすぐに相手に伝わります。だから面接だけでなく、募集の文面から頭をひねって考える。一人の人間として相手を思いやって接することが、結局は自分や会社のためになると思います」
■改善へトップの本気度 111の要望1年掛けて
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