■近田眞代さん「外環被害住民連絡会・調布」 おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(54)
高速道路「東京外郭環状道路」(外環道)の地下トンネル掘削工事の影響で、東京都調布市東つつじケ丘の市道が陥没した事故から約2年半。閑静だった住宅街は、家屋の解体や地盤補修工事の準備が進み、さながら工事現場のようになってしまった。そして今年4月28日、工事に反対してきた近田眞代さん(75)も我が家を後にした。(井澤宏明)
トンネルルートの真上に住む眞代さんが異変を感じたのは2020年9月初めのこと。耳がツーンときて、ドスン、ドスンという異様な振動を感じた。ところが夫の太郎さん(76)に訴えてもなかなか取り合ってもらえない。理解してもらえるようになったのは3週間ほどたってからだった。 事業者の東日本高速道路(NEXCO東日本)の職員にも来てもらったが、感じないという。近所の住民からは「外で音楽が鳴っている」「昼間は人がいるはずのないアパート上階で、ずーっと歩く音がしている」などと相談を受けたが、直径16メートルの巨大なシールドマシンが地下を通過していることを知らない人がほとんどだった。
1か月半ほどたった10月18日、近田さんの自宅から100メートルも離れていない市道で陥没事故は起きた。穴は幅約5メートル、長さ約3メートル、深さ約5メートル。近所には幼稚園もあり、人や車が巻き込まれなかったのが不幸中の幸いだった。
その後も、近所の家が傾いているからと避難の準備を呼びかけられたり、近所の水道管が水漏れしたり。自宅隣の空き地を含む地中からは、長さ約30メートル、幅約4メートル、深さ約3メートルの巨大な空洞も見つかった。
一方、NEXCO東日本は、陥没や空洞と工事の因果関係を認めて謝罪。翌21年になって、トンネル直上の幅約16メートル、長さ約220メートルの約30軒に限って「地盤の緩み」が確認されたと発表。住宅を更地にして地盤補修するための「仮移転」や買い取りの交渉を始めた。
トンネル直上にある近田さんの家もこの対象になった。「地盤補修」には2年間かかるというが、この歳になって2回の引っ越しが必要になる「仮移転」などできるわけもない。立ち退きを選ぶしかなかった。
対象に含まれなかった多くの住民も、住宅の壁のひび割れや地割れ、体調不良に苦しんでいる。「お金をもらって移転できる人は、まだいいじゃないですか」と、住民から心ない言葉をかけられることもあった。
■立ち退き迫られる
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