金曜日, 12月 5, 2025

これから求められる人事のプロ(吉田洋介 人事図書館館長)

吉田洋介(よしだ・ようすけ) 人事図書館館長
新卒より組織人事支援企業にて勤務し、2021年に独立。経営人事支援を行うと共に、24年4月、人事の学びの場「人事図書館」を設立。

■人事図書館発・人事労務キャリアの先を読む 最終回

2024年6月号からお世話になった本連載も最後を迎えました。ここまでお読みくださったみなさま、本当にありがとうございます。最終回のテーマとして「人事のプロ」をとりあげさせていただきました。

これからの時代は人口減少が大きな課題となってきます。単に採用が難しくなるというレベルではなく、お金があっても人が来てくれない、お金と人の優先順位の逆転が象徴的な出来事になるでしょう。この現象について詳しく見てみます。

■事業よりも人

今までは事業があり、利益があり、お金があれば人は採れるし、辞めないという構造がありました。つまり言い切ってしまえば人よりも事業やお金が上位にあり、人を雇うためにはお金があれば何とかなる環境です。各企業ではどうしたら儲かるか、事業が前に進むかに注力し、お金を稼げる人が育ってきました。

一方でこれからはお金があっても人は来てくれません。収入が高い会社に人が集まることはもちろんありますが、働き手からすればどこも人不足で就職先は選び放題ともいえる環境です。お金がもらえるというだけで、自分が魅力を感じない企業へ行く必要はないのです。今後人口が増えることは当面ないため、少なくとも今後50年ほどは採用が困難になり続ける一方です。

事業を続けたくても、お金があっても人がいないから継続できないという現象は大都市圏を除く各地域で現実となってきています。

■人事のプロの採用育成を

では人が集まり、辞めない魅力的な組織はどうつくればいいのでしょうか。

『働き方の哲学―360度の視点で仕事を考える』村山昇 著、若田紗希 イラスト/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2024年

『働き方の哲学』(村山昇 著)では、物心共に満ち足りて、働きやすく、働きがいのある会社が良い会社と言われています。

もちろん急に給料は大きくあげられませんし、労働環境の改善も簡単ではないでしょう。しかし、それでも良い会社しか選ばれなくなるのは遠くない現実です。向き合わなければならない確実に来る未来です。我々が事業を創り、日々奮闘しながら売上・利益を創出しているように、良い会社に向けて奮闘することが欠かせないのです。

しかし、多くの企業には事業のプロはいても、良い会社づくりのプロはいません。本格的に人が採れなくなる前に、離職が進む前に良い会社づくりを進める人事のプロを採用・育成していきましょう。

一度採れなくなってから手をつけていては遅いと私は考えています。せっかくの素晴らしい事業を今後も継続していくために、事業と人の優先順位が入れ替わる時代に備えていきましょう。

私たち人事図書館も引き続き「すべての組織に、人事のプロ」を掲げて取り組んでいきます。少しでもみなさんのお力になれれば幸いです。

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