■目次
「内緒で食べたショートケーキ」入居者と職員(介護職員、介護担当)
「思い出のカバン」 入居者と職員(介護福祉士、要介護者担当)
「ありがとうをみえる化、バリュー評価制度を導入できた」部下と上司(事務職員)
「心からの笑顔」入居者と職員(介護福祉士、要介護者担当)
「排水詰まりの解消」入居者と職員(施設維持職員、建築士)
「第39回ゆうゆう祭」入居者と職員(介護福祉士、自立者担当)
「入居者、家族共に安心のサービスを提供する」入居者と職員(介護福祉士、自立者担当)
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「内緒で食べたショートケーキ」入居者と職員(介護職員、介護担当)
腎機能が低下していると、時にカリウムを多く含む野菜や果物の摂取制限が必要になることがあります。私には、介護1年目、週3回、人工透析で通院されていたご入居者のお誕生日に、2人だけの秘密のつもりで、桃の果肉半分が乗ったケーキを半分個して食べた思い出があります。
このエピソードは、そんなご入居者と職員の2人だけの秘密、「内緒で食べたショートケーキ」です。
そのご入居者は、重度の糖尿病で、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症の三大合併症まで発症されており、週3回の人工透析に通われていました。人工透析は、太い針を刺すため非常に苦痛を伴いますが、大袈裟ではなく、その方の命を繋ぐためには必要なことです。その通院に付添い、看護師や医師との介護・医療連携を通じて、その方の健康状態を把握し、日常生活をサポートすること。それは〈ゆうゆうの里〉の介護職員の任務です。
週3回もあるのに、憂鬱で、人工透析終了後は疲れで食欲が無く、その方の元気になる食事は、本来人工透析患者が口にしてはいけないものが多く。。。食事は制限制限の日々。毎日が少しでも楽しくなればと願い、この憂鬱になる現実に逃げ場が無いのか、人工透析の際に看護師から医師に確認して貰いました。
週3回、人工透析をしているからこそ、緩やかに考えることが可能。課長にも相談して許可を貰いました。
大きな桃の乗ったケーキを食べたいなー!ご本人からそんな野望を聞き出しておき、お誕生日がその決行の日となりました。その日もクタクタな状態で帰宅。お部屋に送り、諸々の対応を済ませ、ささやかなお誕生日会のスタートです!
病院の看護師と医師の許可を取っていることを伝え、桃のケーキをサプライズでプレゼント。その戸惑いと優しい表情が忘れられません。「ありがとう」と言ってくださり、ひと口召し上がり、ひとつでは多すぎると半分個することに。戸惑いましたが、そんな近くに感じてくださっていることが嬉しく、「ありがとうございます」と、半分個して誕生日をお祝いしました。お互いにわかっているから、ひと口、ふた口だけ。
その時、突然、2人の姪御さんが訪問され、その状況を見られてしまいました。どちらかというと、厳格な方々で、「怒られる!」と覚悟しましたが、お二人は、まさかの行動に。「い~けないんだ、いけないんだ~」と歌を歌いながら、「見ちゃったからね!」といたずらっぽい表情をして入って来られました。
平謝りの私に対し、娘さん2人が発した言葉は「ありがとう」。その声は、本当に深くて。
「すみません。今後は、こんな勝手なことはいたしません。
新米介護士の私が瞬時に反省し心に誓ったことです。どんなにご入居者のためを想っても、心配をかけてしまうやり方は駄目なこと。今回のことがきっかけで、傍に居させてくださることで、こちらも支えていただいていることを実感し、担当を任していただいていることに感謝しました。
どんな状態のご入居者でも、自分が関わることで、その方とその方の周りに居てくださる方を少しでも楽に、安心して、楽しく過ごしていただけるように、もっともっと勉強して、介護士としての知識と技術を増やしたい!と目標が定まりました。
「ありがとう」は人と人を繋ぐ言葉。人を許し、人を元気づけ、勇気づける魔法の言葉。
それが溢れている介護職場は、自分も成長できる尊い仕事ができる場所でした。
「思い出のカバン」 入居者と職員(介護福祉士、介護担当)
ある日、ご入居者のK様から相談があるので聞いて欲しいと連絡を受けました。K様は90代の男性。全盲の方です。学生時代に事故で全盲になってしまったとの事です。全盲という大きなハンデキャップがありながらも、パソコンを操作し小説をいくつも出版している聡明なお方です。また、日本に初めて盲導犬を導入した方でもあります。
相談事は「大切な思い出のカバンを直したい」という事でした。見ると古い革のカバンの肩紐が劣化で切れていました。細かいカービングの細工がされていましたが、革の状態も悪く、肩紐はとても修理出来そうにはない様子でした。K様はボロボロの鞄を手で撫でながら「この鞄は世界に2つとない物なんです。私の妻が作った物なんです。難しいとは思いますが、●●さん、何とか直せませんか?」と言われました。
素人目にも鞄の修復が難しい事は分かりましたが、私はK様の想いを何とか叶えてあげたいと思いました。鞄を写真に撮り、いくつも鞄の修理店に問い合わせましたが、思った以上に難航しました。
そしてやっと納得のいく職人さんに辿り着きました。鞄を預かり職人さんに郵送。メールで何度もやり取り。壊れている部品の交換、革の内側の張り替え、表面の修復、そして切れていた紐を付け替え・・・完璧な状態で鞄は戻って来ました。
きっと喜んで頂けると思いK様にお渡しすると、何と「紐が短いです。立った時に腰のあたりに来る長さにしてもらいたい。」と希望を言われました。
・・・もう一度やり直しです。そこまで気を回せなかった事を悔やみながら、紐の長さを測り、再度職人さんへ郵送。
そして、やっと納得のいく思い出の鞄が戻って来ました。K様は戻ってきた鞄を愛おしそうに撫でながら、「ありがとう、本当にありがとう。」と何度も言いながら、奥様との思いでを懐かしそうに話して下さいました。
しかし、鞄を使う間もなくK様は体調を崩され、そのままご逝去されました。葬儀にいらした娘様から、「鞄は私が持ち帰って大切に使います。色々ありがとうございました。」とお礼の言葉を頂きました。K様は娘様に鞄の修理の事を伝えていたようです。そしてK様は私の事をとても信頼して頼って下さっていた事を聞きました。
時間も手間もかかった鞄の修理でしたが、介護士として、「こちらこそありがとうござます「」と心から思いました。
「ありがとうをみえる化、バリュー評価制度を導入できた」部下と上司(事務職員)
私は、昨年5月に京都ゆうゆうの里から本部人事総務部に異動し、令和5年度の人事制度改革のプロジェクトメンバーとして、改革2年目の人事制度改革に携わらせていただきました。
特に、2年目の主な主題としては、昇給・賞与支給時に、支給率を加減する加減制度の設計でした。その企画原案を作成してほしいという指示を当時の人事総務部の次長からいただきました。しかしながら、制度の原案を一から企画するということが初めてでしたので、なかなかよい案が頭で思いつかず、どうしても、明確な答えがほしくて、ご指導をいただく機会が多かった次長に直接伝え、上司が求める答えを聞きだそうとしました。
その際に次長から、「僕の持っている考えや案を伝えることは簡単だが、それを伝えてしまうと、Aくんが新しい案を考えるとき、その考え方に影響されてしまうでしょう。それであれば、僕が考えたのと変わりないし、一人で十分だ。Aくんが自分で調べ、先入観にとらわれず、自由な発想で考えてくるものを期待しているんだ。これは業務指示であるとともに、よりよい制度を企画するため、役職をこえた相談でもあるんだよ」と伝えていただきました。
この言葉を聞いて、安易に答えを求めてしまっていた自分を恥ずかしく思い、また上司からこのように大きな信頼をいただいていることに非常に感謝し、うれしく思いました。
そこから、よい案が浮かばないのは、自分の中にある情報蓄積が足りないのではないかと考え、まず人事評価制度に関する導入事例や制度案がまとまった関連書籍を大量に購入し、熟読しました。またインターネットで、大手企業の各社のホームページ・マイナビ・リクナビ等で各企業の人事関係の情報を集約するなど、とにかく他社の評価事例を集約・蓄積することから始めました。
そして、自分の中で、当財団の価値観や大事にしている理念に当てはまる行動を大事にしている職員に、プラスとなる評価を行いたいという思いをこめて、企業の価値観に沿った行動をしているかというバリュー評価制度の導入を企画案として提出しました。
結果、この評価は(財団が大事にしている価値観)を発展、「ありがとうのエピソード評価」として採用され、次長にブラッシュアップいただき、同制度は、労基旬報(新聞)などにも掲載されました。上司から感謝のことばをいただきましたが、私のほうこそ信頼をいただき、ありがとうございましたという気持ちが深くあります。
「心からの笑顔」入居者と職員(介護福祉士、介護担当)
ご入居者のB様を居室へお送りし、更衣介助をして臥床していただく際、心を込めた声掛けを行い、とてもスムーズに休んでいただくことが出来ました。移乗介助の際も臥床の際も、恐怖心からか、腕を強く掴まれたり、不機嫌な様子になってしまわれることが多く、声掛けをしてもなかなか理解していただけないことが多い日々でした。
この日は、しっかりと目を合わせて声掛けを行ってから移乗。しっかりと私に掴まり、ベッドに座っていただき「上手くいきましたね」と声掛けすると、満面の笑みで「そうですね」と答えて下さいました。臥床の際には、「嬉しいわ、嬉しいわ、ありがとう」と言いながら、両手で私の首や頬をなでられ、排泄介助が終わってからは笑顔で肩をポンポン叩いて下さいました。こんなことは初めての経験でした。
これまでも、笑顔で休んでいただくことは出来ていましたが、この日ほど喜びを表していただいたことはなかったと思います。私もたくさんの感謝の言葉をお伝えしました。
「排水詰まりの解消」入居者と職員(施設維持職員、建築士)
ある入居者C様の居室のキッチンで排水が溢れる事故があり、調べを進めると、これまで誰にも知られていなかった排水管が壁中に見つかり、管内は錆び等で閉塞していることが判明した。
根本的解決のためには、排水管の更新が必要と考えたが、そのためには当該居室を含め関連する他居室(3室)でも排水管、及び内装(壁・床)工事が必要と内容も大掛かりであったため、すみやかな実行は難しく、慎重に計画し翌年の予算化を進めた。先述の事故発生より約1年後に、該当排水管の更新工事を実施し、根本的な排水管の詰まり解決に至った。
工事完了時に入居者C様から、「工事まで時間が長くて、またいつ溢れてくるか心配だったけれど、これで安心してキッチンを使える。あなたが最後まで丁寧に対応してくれて良かった」と感謝の言葉を頂いた。
私からは長期間、日常生活に不安を与えてしまったが、工事までご理解いただけたことに感謝の意を伝えたところ、「また何か気になることがあったら、あなたに言うから頼むね。」と返答があり、今後も頼って頂けるという前向きな言葉に、被害を与えたのでマイナスからのスタートではあったが、結果として信頼関係を構築することができたと思った。
「第39回ゆうゆう祭」入居者と職員(介護福祉士、自立者担当)
今回のゆうゆう祭では終了後、多くのご入居者より労いと「楽しかったわ!ありがとう!」のお言葉やお手紙をいただきました。
ゆうゆう祭実行委員の方々以外にも、事前準備から当日運営まで通してご協力していただけたことで、当日は事故が発生することがなく無事に終えることができました。そのおかげで、今回たくさんのご入居者に連日お声がけしていただけるほど楽しんでいただけたのだと思います。
ご協力していただいた職員の方々に「手伝ってくださり、ありがとうございます。」という気持ちはもちろんですが、一緒に楽しんで、盛り上がってくださったご入居者の方々にも「一緒に盛り上げてくださり、ありがとうございます。」という気持ちでいっぱいです。
「入居者、家族共に安心のサービスを提供する」入居者と職員(介護福祉士、自立者担当)
・外部受診の付き添い開始になったきっかけになった。
・入院になる可能性があると本人混乱あり病院と本人、家族との中間役対応。
・家族からも本人の認知面、判断力等心配な声ありこちらから受診付き添いの提案。
・多職種と情報交換行い(看護、計画作成、フロア職員)氏に対してのアプローチ方法を周知。
・●月●日に初回受診付き添い実施。
上記内容から、受診付き添いを実施してもらえ安心だったと本人家族より話あり。
今回、入居者D様より「今日病院で入院になる可能性があると言われた」と報告があり、受診付き添いを実施するきっかけとなった。
基本的に日常生活は自立であり、様々な既往歴をお持ちの方であったが自立意思も強くなかなか受診付き添いを行うまでに至れていなかった。受診後も、「もう少し自分で頑張ってみようかな」と言われる反面不安な部分あり、家族の希望もあるため、双方の意見を尊重した援助を現在も続けている。
本人、家族より、「ここに入居してよかった。介護業界は人手不足な中、ここの職員はきめ細やかなサービスが提供出来ている。いつも感謝していますありがとう。」「Eさんのような職員がいるから安心して母を任せられます。」とお礼の言葉あり。以降、度々自身を希望し報告や連絡することがある。
今回の対応で、自身の行動が施設の評価につながっていることを実感し自信にもつながった。


