価格転嫁とは、企業が取引先や消費者と適切に交渉し、公正な価格設定を行うことです。この価格転嫁は、自社の付加価値向上にも、また賃金水準向上にも必要で、ひいては国全体の生産性向上につながります。価格転嫁を推進するための方策として以下の3つが最低限必要とされています。
(1) 価格交渉力の強化と公正な取引関係の構築
価格転嫁を進めるためには、企業が取引先と対等な関係を築くことが不可欠です。特に雇用の7割を占める中小企業は、大企業との取引において価格決定権が弱い場合が多いため、業界団体を通じた交渉力の強化や、政府の支援策を活用することが有効です。また、下請け企業に対する不当な買いたたきを防ぐため、公正取引委員会のガイドラインを遵守し、公正な取引を実現することも重要です。
(2)価格転嫁の合理的な説明と理解の促進
顧客や取引先に価格転嫁を受け入れてもらうためには、コスト上昇の背景や必要性を丁寧に説明して、納得感を高めることが求められます。例えば、原材料費やエネルギーコストの上昇、人件費の増加など、価格改定の根拠を明確に示すことです。また、価格改定による品質向上やサービスの改善点を伝えることで、単なる値上げではなく、付加価値の向上として理解してもらうことです。
(3) 政府・業界団体との連携強化
政府や業界団体と連携し、価格転嫁を後押しする環境を整えることも効果的です。例えば、価格転嫁を適正に行う企業への補助金や税制優遇措置を活用するなどです。また、業界団体が一斉に価格改定を行うことで、特定の企業だけが値上げによって競争力を失うことを防ぐことができ、さらに、取引慣行の見直しやガイドラインの策定を通じて、公正な取引環境を整備することができます。
以上のように、価格転嫁を促進するためには、企業の交渉力の強化、合理的な説明、政府や業界団体との連携、これらを総合的に実施することで、持続可能な価格転嫁の実現が可能となるのです。

賃金システム研究所🄬所長 賃金改革のプロ・プラチナ企業育成のマイスター🄬
主な著書:「新訂2版 賃金システム再構築マニュアル」、
「赤津雅彦の賃金改革キーワード」、
「伸びる組織のための人事・賃金基礎講座」等
(注)「プラチナ企業育成マイスター」は登録商標です。