業務中に起きた病気やケガの報告を行わない「労災隠し」の動機について、2023年中に送検された103事業者の調査結果によれば「元請事業者に迷惑を掛けることを懸念した」が22件(21.4%)と最多に上ることが、厚生労働省の調べでわかった(表)。

事業者への報告義務を定める労働安全衛生法100条違反で送検された事業者について、労災隠しの動機を都道府県労働局に調査。このほど「労災保険制度の在り方に関する研究会」に報告した。
最も多かった動機(「その他」を除く)は「元請事業者への迷惑を懸念」で22件(21.4%)だった。「元請事業者から今後発注を受けられなくなることを懸念」も17件(16.5%)に上った。
自社への影響の懸念では、「自社への監督署による司法処分や行政指導等を避けたかった」と「自社の企業イメージの低下を懸念」がともに12件(11.7%)と高い。
■「報告義務認識していなかった」も2割弱
また「死傷病報告の提出義務を認識していなかった」も20件(19.4%)と2割近くに及んでおり、法令違反を認識していなかった例も少なくないことが窺える。「メリット制による保険料増額を懸念」との回答は、元請・自社への影響ともにゼロだった。
表中の「⑧その他」では、「元請事業者から指示・要請があった」「元請事業者への報告が遅れた」「自らの出世と社内の部署間の関係を保つため」「担当者の業務繁忙」「被災者(派遣、実習生)の主張を信用しなかった」などの事例があった。


