深刻なドライバー不足など物流業界共通の課題に対し、事業では競合する企業同士が社員の交流を通じて経験や知見を共有し、解決策を探る「他流試合」型研修の試みが進められている。発起人であるアサヒロジスティクス(さいたま市、従業員数7145人)人財本部採用育成グループの井上健グループ長は、「限られた人材を同業他社で取り合っても業界の発展は見通せない。物流業界全体が“選ばれる業界”になるために、各社で知恵を絞り新たなアプローチを探りたい」と力を込める。

■同業他社へ呼びかけ
取組みのきっかけは2021年ごろに遡る。同社では女性や未経験者を含めたドライバー採用と定着に向けた施策に注力し、特に17年以降取組みを加速させてきた(前編)。ただ、他業種からの採用に大きく関わる業界全体のイメージ向上や就業環境などの面について、個別企業での取組みだけでは限界もある。
井上さんは、物流業界での人材育成や調査研究、情報交流などを行う業界団体である日本ロジスティクス協会(JILS)の人事部門研究会の場を通じ、同業他社へ共同した取組みを呼びかけた。同様の問題意識を持つ企業が呼びかけに応じ、業界の課題解決に向けた人や知見の交流として始まったのが「他流試合」だ。
初回は5~6社の物流企業が合同で開催。さらに、食品物流という共通の業態のため課題感を共有しやすい面もあり、ギオン(神奈川県相模原市、従業員数5000人)とは継続的に「試合」を重ねてきた(下写真)。

「具体的な人事施策やアイデアの共有だけでなく、お互いの社員同士が実際に顔を合わせて交流することで、それぞれが刺激を受けたり励みになるといった意義も大きい」
個別企業としてだけでなく、業界として課題を捉える視野の広がりは、アサヒロジスティクスが経営理念(下図)の一つに掲げる「物流業界を、誰もが働きたいと思える憧れの業界にします」との考え方によるところが大きいと、井上さんはこう続ける。

「物流に関わる仕事は昔から、“土方・船方・馬方”の“馬方”として、ネガティブなイメージとして語られることも多かった。その社会的地位の向上が創業時からの精神であり、私たちには自然としみついています。そのために安全性の確保はもちろん、業界で働く人自身の意識を変えること、またユニフォームをはじめ“かっこいい”と感じてもらえる機会を増やしていくことも大切だと考えています」
■物流人事サミット
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