物流の2024年問題など深刻化する人手不足のなかで、毎年ドライバー数の純増を続ける物流会社がある。食品輸送のアサヒロジスティクス(さいたま市、従業員数7145人)は近年、女性や未経験者のドライバー採用へ重点的に注力。免許取得や安全面など新人研修の充実をはじめ、その先にある階層別教育を採り入れた研修の体系と定着の仕組みについて、人財本部採用育成グループの井上健グループ長に聞いた。

取組みを加速させた2017年の時点では、全ドライバー社員に占める女性比率は2.4%と業界平均並みだったが、25年3月には約8.1%と3倍超に拡大(左図)。未経験者も増加人数の約半数と大きな割合を占める。

「限られた経験者を各社で奪い合っていては、業界全体としての発展は難しい。誰でも働ける環境にしていくために、〝物流=男社会”といった偏ったイメージを変えていく取組みにも力を入れています」(井上さん)
20年には女性専用トラック「クローバー」の導入を開始。運転席全面を覆えるカーテンや収納用資材の設置位置など、女性の声を基に「快適」を意識した車両を各拠点へ展開するほか、ユニホームのデザイン・開発にも注力する。
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未経験でも安心して働ける要となる安全面で、大きな役割を果たしているのが17年に開設した専用研修施設「滑川福田センター」だ。全長約700メートルの練習コースを備え、ドライバーは全員が3泊4日の新人研修を受講する。配属先ごとに異なる指導ではなく、全社基準で統一した教育プログラムである点がポイントだ。22年には「川越自動車学校」をグループ化し、短期間での準中型・中型免許取得も可能となった。

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「教育を受けられることが安心感につながっているという声は多い」と井上さん。一方、「定着に至らず職場を離れてしまう人もまだ多いのが課題です」。
同社ではWebやSNSをはじめ積極的な採用広報を進めるとともに、入社した社員一人ひとりへの対面でのサポート体制「アサヒ・ナビゲーション・システム」を整えてきた。
「入社した社員は全員に『トレーナー』がつき、会社の歴史や業界の将来展望などを教えています。対面を基本としているのは、新入社員がコミュニケーションに困らないようにとの狙いもある。トレーナーの資格にはチェック基準があり、合格した人が各拠点に配置されています」
実際に社内で使用しているチェック基準などの一部を下に抜粋した。

「笑顔があり、親しみが持てる」「質問に適切に返答できる」など、新入社員の目線に立った実践的な基準設定が窺える。「難しい言葉を使って分かったつもりになっても、行動が伴わなければあまり意味はありません」と井上さんは話す。
■教育研修が組織に横串
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