自働化(self-worked)とは、これまで行ってきた工場での人の「作業」を機械に置き換える自動化(automatized)から、人の「働き」を機械に置き換える事です。一般的に「人偏のついたジドウカ」と呼び、従来の自動化とは区別しています。主に機械や品質、ライン・工程の異常を自律的に判断して設備を止めることを意味します。
筆者は仕事柄日本の製造業の現場を見学する機会が多いのですが、かつて(80年代)と比べて、この自働化が進んでいる工場が多くなったことに驚かされます。ある日、生産ラインで、機械が異常を察知してラインを止めた事象に遭遇しました。その時、工場の担当者は慌てることなく、冷静に対処して事なきを得ました。かつては、ラインが止まると現場は大慌てして、その原因が究明されるまで生産が止まることがよくありました。それが、機械が「自分で」異常を察知し、ことが重大になる前に知らせてくれるのです。
自働化が進みますと、人間の知的能力と機械の計算力を組み合わせ、より複雑な課題に取り組むことが可能ですので、時間的な余裕ができます。とくに現場の監督者は、より付加価値の高い仕事にその時間を振り向けることができ、職場全体の生産性の向上が期待できます。コストの削減により利幅が確保でき、ひいてはその分の付加価値を賃金上昇に向けることも可能となるのです。
自働化を進める際には、自社の方向性に沿った将来を見据えた設備投資が必要です。そしてその方向性を決めるのは、自社にどのような人事・賃金の仕組みを導入するか等の場合と同じく、企業トップの役割です。自動化から自働化へのシフトは、今後の働き方改革にはなくてはならないものといえるでしょう。
一方、自働化を進める上では、AIやロボットの進化と同様の課題が生じます。企業は労働者に対して、労働市場の変化に対応する高度な知識の習得、スキルアップ等、再教育の機会を与えることが求められるのです。