■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(66)
岐阜県大垣市で計画されていた風力発電所の建設を巡り、大垣警察署が事業者の中部電力の子会社「シーテック」と開いた「勉強会」と称する打ち合わせで、思いがけず個人情報を提供されていた同市の船田伸子さん(67)(今年3月25日、4月25日号に掲載)。他の市民3人と起こした国家賠償請求訴訟の控訴審判決が2024年9月13日、名古屋高等裁判所で言い渡された。(井澤宏明)
長谷川恭弘裁判長は「大垣警察及び岐阜県警による一審原告ら(船田さんたち)の個人情報の収集やシーテック社への提供をプライバシーを侵害するもので違法であると認める」として、一審の岐阜地方裁判所が認めた個人情報の「提供」に加えて「収集」の違法性も認め、原告が求めた損害賠償の満額計440万円の支払いを県に命じた。さらに、シーテック社の議事録に記載されている4人の個人情報は県警が保有していると認められるとして抹消を命じた。
■警察の監視、住民分断
「画期的判決」。判決が言い渡されると、名古屋高裁前に現れた船田さんたち原告や弁護団は勝訴を告げる旗を掲げ、支援者らの拍手に包まれた。
朝日新聞が2014年7月24日、大垣署とシーテック社の勉強会の「議事録」をスクープして10年、16年12月の提訴からは8年が経つ。
愛知県弁護士会館で開かれた記者会見で船田さんは「被害や実害がなく、非常に難しい裁判だと学者の先生や周りにも言われた」と提訴まで2年余りかかったことを振り返り、提訴に踏み切った胸の内を次のように明かした。
「(警察に)監視されていることによって、自分だけでなく自分につながる家族や友人や多くの知人たちにまで情報収集の手が伸びていることに恐怖を感じたし、(今回の)判決でも言われているように、住民を分断し、知らない間に公安警察のやり方によって個人が孤立させられているのが今の社会なんじゃないかなと思った」
今回の判決は「シーテック社及び大垣警察が、相互に交換した情報を利用した情報操作等によって地域住民を分断させ、(中略)まさにマッチポンプともいい得るもの」と断じていた。
■市民運動への偏見払拭
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