■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(60)
警察が風力発電所の建設を計画している中部電力の子会社「シーテック」と開いた「勉強会」と称する打ち合わせで、思いがけず名指しされていた岐阜県大垣市の船田伸子さん(67)。他の3人の市民と岐阜地裁に起こした国家賠償請求訴訟は提訴から5年余りたった2022年2月21日、判決の日を迎えた。(井澤宏明)
鳥居俊一裁判長は「原告らのプライバシー情報を、必要がないのに、積極的、意図的に提供し、みだりに第三者に提供されない自由を侵害したもので違法だ」として、原告一人当たり55万円を支払うよう岐阜県に命じた。画期的な判決だった。
「公安警察のやっていることを裁判所が違法と判断することはまれだし、非常にいい判断だ」と山田秀樹弁護団長は評価。船田さんも「法律事務所に勤め、人権擁護に力を注いできた。(情報提供が)思想信条の自由に関わる重大な問題だと認められ、私自身がやってきたことが間違っていなかった」と喜んだ。
一方、情報収集について判決は「原告らの活動が市民運動に発展した場合、公共の安全と秩序の維持を害する事態に発展する危険性はないとはいえない」として「違法とまではいえない」と判断。原告は、収集した個人情報を岐阜県警と警察庁が保有しているとしてその抹消も求めていたが「情報が特定されていない」と退けられてしまった。
■なぜ私が収集対象に
原告と岐阜県は判決を不服として控訴。船田さんは控訴審で、「勉強会」に参加した当時の大垣署員の証人尋問の実現に強く期待していた。「なぜ私自身が情報収集の対象になっていたのか。それはやっぱり警察にしか分からないですよね」
ところが、県は「情報収集活動の個別具体的な内容が明らかとなれば、情報収集活動に支障が生じ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」と主張。証人として出廷したとしても証言できるのはそれぞれの経歴と所属する課の業務内容に限られ、「証人尋問の必要性は認められない」と拒み、一審に続いて実現できなかった。
23年12月12日に名古屋高裁で開かれた第7回口頭弁論では、原告側が求めた南山大大学院の實原隆志教授(憲法、情報法)が証人尋問に立ち、「収集した情報をどんなふうに分析して、解析してもいい、ということがまかり通ると、警察や関係機関が個々人を監視することになり、そうした社会では、市民運動が萎縮させられる可能性がある」として、警察の情報収集や保有のルール作りの必要性を指摘した。
■もの言う自由を守る
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