■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(59)
警察が風力発電所の建設を計画している電力会社と「勉強会」と称する打ち合わせを繰り返し、その議事録で無関係な自分が名指しされていたばかりか、病気で入院したことにされていた。こんな境遇に置かれたら、どう振る舞うだろうか。(井澤宏明)
「岐阜県警が個人情報漏洩 風力発電反対派らの学歴・病歴」――。今から10年前の2014年7月24日、朝日新聞がスクープした「大垣警察市民監視事件」。被害者の1人で岐阜県大垣市に住む船田伸子さん(67)は、中部電力子会社「シーテック」の議事録に自身の名前が記されていることを朝日新聞記者から電話で告げられるまで、風力発電所建設計画についてほとんど知らなかった。
当時、シーテックは岐阜県西端の大垣市上石津町と関ケ原町の境に「ウインドパーク南伊吹風力発電事業(仮称)」を計画。高さ130メートルの風力発電機16基を建設するため、環境影響評価の手続きを始めていた。
議事録では大垣市民4人を名指ししていた。うち2人は建設予定地の上石津町に住み、風力発電所の勉強会を開いた松島勢至さんと三輪唯夫さん。さらに、1990年代に「徳山ダム建設中止を求める会」を立ち上げ事務局長を務めるなど市民運動に携わってきた近藤ゆり子さんに加え、船田さんの名前もあった。
■議事録に自分の名が
「かかわりのない私がなぜ」と船田さんが不審に思うのも無理はない。後に名古屋地裁に証拠保全を申し立て、シーテックから受け取った4回分の議事録の3回目(2014年5月26日)に、岐阜県警大垣署警備課の警察官の発言として、以下のように記されていた。
三輪唯夫は、岐阜コラボ法律事務所(原文ママ)の事務局長である「船田伸子」と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことを懸念している。現在、船田は気を病んでおり入院中であるので、速(同)、次の行動に移りにくいと考えられる。今後、過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えられる。身に危険を感じた場合はすぐに110番して下さい。
船田さんは14年までの24年間、弁護士法人「ぎふコラボ」で勤務し、事務局長も務めた。議事録の存在を知らされた当時、体調を崩して休職していたが、入院はしていなかった。三輪さんとも、ぎふコラボの催しなどで年に1、2回、顔を合わせる程度。東京電力福島第一原発事故後、「さよなら原発・ぎふ」の活動にも取り組んでいたが、風力発電所計画は耳にしたことはあったものの、大して関心を持っていなかった。
■人を疑うのは寂しい
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