最近の賃金引き上げは、一部の大手企業を中心に大幅なアップが行われました。それに伴い中小企業でもそれに対抗して、求人条件をより良くするために、社員の賃金水準の引き上げをどのように行うべきかという質問が筆者のところに多く寄せられています。
賃上げへの対処方法として理想的な方法の第一は、自社の賃金制度の中にインフレや相場の上昇に対して説明する部分を確保することです。例えば、物価が3%上がったら社員の賃金水準も相応の引き上げを行うということです。それには、企業の支払い能力が充分にあることが前提となります。しかし、中小企業は支払い能力が充分でない場合がほとんどです。
利益準備金等の社内留保がある企業の場合は、その部分をその原資に回すことも可能ですので、ここは企業存続のために株主への配当等(利益)にまわさずに、人的投資と考えて賃上げを優先すべきでしょう。経営トップが決断すべきですが、賃金の上げ方にも工夫が必要です。
一時金やインフレ手当等のその時限りの対処方法では、社員の賃金水準そのものは中長期的には上げられません。そこで、しっかりとした賃金制度というインフラがものをいうのです。
賃金の世間相場は、若年層(学卒初任給の対象者)やDXがらみの高度専門職層が高騰しています。年齢でみますと、若年層が高く、中高年齢層は高くなっていません。むしろベースダウンの様相を呈しています。中高年層で高くなっているのは、高度専門職や管理職層(部課長クラス)のみといえます。
つまり、せっかく採用しても3年で辞めてしまう若年層賃金への対策こそが必要で、これは急を要します。経営資源(賃上げ原資)を若年層に集中して使うのです。
例えば、社内格付けを適切に行えるDKモデル®を採用している企業では、以下のような緊急避難的な対応が行えますので、優秀な若年層社員の確保と定着に成功しています。そのエッセンスをここでご紹介しましょう。
22歳の大卒初任給が自社ルールで23万円だったとします。それに対して世間相場は25万円。2万円の格差のために、25万円の初任給を提示できない東京の企業を想定します。
初任の大卒格付けは、DKモデル®では「2等級・3級・1号」です。基準年齢は満22歳。これを、「2等級・3級・15号」にしますと25万円を超える金額になり、東京の相場を少し上回る金額にします。27歳くらいまでに、自社の政策基準線(ポリーライン)にのせるように、毎年徐々にこの調整要素の号数を減らすのです。役割を示す「等級」と社員の貢献度を示す「級」は従来通りです。若年層賃金への調整を無理なく合理的に行う方法として、「号」を活用する一例です。