マネージャー(管理職)とスペシャリスト(専門職)を同格とする人事制度を2016年から導入しているナリス化粧品(大阪市)では、23年に初の専門職出身の女性役員が生まれた。キャリアコースを複線化する人事制度は近年の動向の一つだが、経営参画の可否や処遇面などで両者に差をつけていない点が同社の特徴。守谷太吾人事部長は「会社にとって必要という点では同じで、どちらが偉いということはない」と話す。背景には、性別や年齢に関係なく処遇や評価を行う公平性を基盤に、個々の社員のキャリア自律を促す組織文化が見えてくる。
■給与も同格で明確化 管理職だけが出世ではない
2016年に導入した同社の人事制度について、守谷人事部長は以下のように説明する。
「以前から、マネージャー職とスペシャリスト職は同格だと社内でも説明してきました。ただ、例えば『課長や部長になること=出世』といった価値観が世の中にあり、それをイメージする社員も多かったので、名実ともに人事制度として明確化しました。マネージャーはもちろん、高い専門性を持つスペシャリストも会社には同じように必要で、どちらが偉いということはありません」
同社は92年前、研究者だった村岡満義氏と製品企画や美容研究研修を担った村岡愛氏が夫妻で創業。性別に関わりなく評価する組織文化は創業の経緯にも由来し、現在も研究開発部門などで継続的に活躍する女性社員は少なくない(写真)。
下の図は、現行の人事制度における職能資格体系のイメージだ。55歳未満については、いわゆる一般職としての「アソシエイト職」があり、上位職位は「マネージャー職」と「スペシャリスト職」にキャリアコースが複線化されている。両コースはともに執行役員が含まれ、経営層としての関わりも想定されている。
「給与も同じです。それぞれのコースは等級に分かれていますが、各等級の格付けごとに横で揃えて報酬も設定しています。例えば、管理職コースの『課長』は専門職コースの『リーダー』に、同じく『部長』は『主席』に相当し、役職手当もそれぞれ同じで分かりやすい制度設計としました。もちろんボーナスなどは個々の実績によって変動しますし、そこは実力主義で評価しています」
前編では、同社の女性管理職比率が約10年で19%から43%に上昇したことを紹介したが、同様に専門職としての女性の活躍も進んでいる。例えば同社の研究開発職は全社員の約1割を占めるが、そのうち女性の割合は61.8%。子どもを持つ女性の割合は38.2%に達する。
23年には専門職出身の女性役員が生まれたことも象徴的だが、管理職と専門職に関わらず、キャリアを継続する上での両立支援施策の充実が、両コースの女性比率を押し上げる土台となっていることも重要なポイントだ。
■キャリア自律がカギ 「自己申告制度」で支援
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