人事制度において男女や年齢で差をつけない方針のもと、ナリス化粧品(大阪市、従業員数673人)は約10年前と比べ女性社員比率が38%から60%へ、女性管理職比率は19%から43%に上昇し、直近の男性育休取得率は5割を超えた。子どもを育てながら働く社員のニーズに応え、代替業務を支える社員のスキルアップや職場の理解醸成に繋げている背景には、社員の声を聴く仕組みとして約30年前に「自己申告制度」を創設し、その声を制度として反映してきた人事施策の積み重ねがあるようだ。守谷太吾人事部長に聞いた。
■上司介さず生の声 実際の制度反映で応える
同社が1993年に導入した「自己申告制度」の概要について、守谷さんに尋ねた。
「社員が上司を介さずに直接人事部の担当者に生の声を上げることができる制度で、対象はパートを含めた全社員です。30年以上毎年継続しています」
制度は年に1回、アンケート形式で実施。質問項目は職場環境や業務、ハラスメントの有無、心身の健康状態、人事考課や将来の方向性についてなど多岐にわたり、基本は5段階で答える選択式で項目数は約30項目ほどだ(表)。
「簡単に済ませようとすれば10分で終わる分量ですが、自由記述欄を含めて各項目に任意で詳細を記入できる欄を設けています。例えば異動先の希望について、『海外事業部に行きたいからTOEICの勉強をしている』といった具体的な内容も寄せられます」
全社員から寄せられた集計結果は、業務量やモチベーションといった項目ごとに、経年でみた平均値の変化を分析。また各部署別に調査値の推移をみることで、結果の値が上昇した部署の取組みを、他部署へ水平展開するといった施策にも結び付けている。さらに人員配置を検討する際にも、重要な役割を果たすという。
「人事異動で各部署が希望するスキルや経験などの要件に対し、該当する社員を絞り込んでいく際に自己申告の結果を参考にしています。もちろん希望した内容がすべて叶うわけではありませんが、条件に適う人材が複数いた場合、なるべくなら本人がその仕事に興味や希望を持っているほうが、受け入れる側にも望ましい結果が期待できます。恐らく社員が思っている以上に、内容はかなり細かく見ています」
所属部署で何らかの問題点があげられている場合には、解決に向けた働きかけを行うこともあるという。
「申告した社員にとって不本意な状況にならない配慮を前提として、必要に応じて部門の責任者や周辺部署などに事実確認のヒアリングを行ったり、改善策を働きかけたりすることもあります」
一方で、会社からのアンケートの場合、本音を伝えず当たり障りのない内容で回答するケースもあるが、その点はどうだろうか。
「実際に全社員がどう思っているのかは分かりません。なかには警戒して詳しいことは書かない社員や『書いても無駄』と諦めの境地の社員もいるでしょう。ただ、結構な割合の社員が自己申告制度を積極的に活用してくれている理由として私が考えているのは、申告であがった声を活かして、実際に社員に有益な様々な制度や規定変更に繋げてきた実績があるからではないかと思います」
■時短、小6まで再延長 育休復職率ほぼ100%
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。