日本の「障害者雇用促進法」では、従来は身体障がい者とされた法の対象となる障がい者の種類が拡張されました。1998年には知的障がい者が、2018年には精神障がい者が、この法の適用対象となっています。
それに、我が国では2024年4月に法定雇用率の引き上げが行われ、対象となる企業規模においても拡張され、現在は40.0人以上の従業員を雇用するすべての民間企業に「2.5%」の障がい者の雇用が義務付けられています。ちなみに、特殊法人や国・地方の自治体は「2.8%」、教育委員会が「2.7%」となっています。
いわゆる健常者の女性や60歳以上高齢者については、これまでの施策等が功を奏し、以前と比べて賃金水準は徐々に上昇しており、人材不足を補うことにも貢献しています。しかし、障がい者については、賃金水準が低迷、あるいは最低賃金レベルからあまり上昇しておらず、雇用が促進されない要因のひとつとなっています。
とくにASD(自閉スペクトラム障がい)等にも対象が拡張されたにもかかわらず、精神障がい者の特性や能力を活かす雇用までには至っていません。まずは「本人の得意なところを見つけて引き出し、苦手な部分については、何らかの支援や分担で補完する」といった環境づくり、あるいは企業トップや人事担当者のスタンスが必要です。
精神障がい者には、一定の分野において、高い特殊な能力をもった人材(いわゆる「異能人」)も含まれます。しかし、アメリカのIT企業でそうした異能人がトップに立ち、あるいは、新しい仕組みの開発に集中できる環境を得て、ひとりひとりが生き生き、黙々と働いているのに比べて、我が国ではその特徴ある人材を企業で活かしきれていません。
「平均的」な社員と行動や言動が違うと、まわりが無視し、あるいは囲い込み、見て見ない振りをするといったことが起こりがちです。障がい者の雇用率が日本の倍以上の国々がある中で、残念ながら、日本は発展途上にあるといえるでしょう。