育児休業で職場を離れた社員の仕事を代わりに支えた同僚へ、取得者本人の賞与原資を配分する「サンキューペイ制度」を、大和ハウスグループの大和リース(大阪市)が始めた。実務を支える同僚に評価として報いることで職場の納得感を高め、育休の取得しやすさを促進する狙い。同社は昨年度、男性の育児休業取得日数に応じて奨励金の支給額を増額し、1カ月超の長期取得者割合が約3倍に増えた。人事部長の佐伯佳夫さんは「潜在的なニーズが高いということ。男女ともに育休をとれる職場は、特に若い世代には当たり前になりつつある」と話す。
■業務代替を「評価」 腑に落ちない感の解消へ
男性育休の取得率や取得期間が年々高まるなか、実際に育休取得した際の職場の業務代替の重要性が高まっている。厚生労働省の2022年度雇用均等基本調査によれば、育休取得者がいた際の業務代替方法(複数回答)は、「同僚が対応」が79.9%で8割を占め、「代替要員を雇用」は15.0%、「人事異動で対応」は14.6%と要員補充の割合は高くない。育児介護休業法が改正されて男性育休の分割取得が進み、断続的な休業が増えるため同僚による対応の比重が高まる背景も考えられる。
では職場全体で業務代替をどう進めるべきか。佐伯さんは「同僚への評価がポイント」と指摘し、こう続ける。
「同僚の立場からは『おめでとう』と送り出しながらも、実際に新しい仕事が増えるとどうしても『腑に落ちない感』はある。一方、取得する側もそれを察して躊躇や遠慮の気持ちがあり、結果的に育休取得が抑制されてしまう。両者の気持ちを和らげるためにも、会社として正しく評価してあげる仕組みが大事です。何の評価もしてもらえなければ、頑張ることはなかなか難しい」
同社の「サンキューペイ制度」は、育休者に支払う予定だった賞与原資を同僚やチームに配分する。賞与額は、決定要素の一つとして出勤率に応じて変動し、例えば6カ月中3カ月育休取得すれば支給は50%となる。その支払われない50%分を、業務代替への貢献度に応じて同僚やチームに分配する仕組み。再分配先の対象は、正社員だけでなく契約社員を含む全ての従業員だ。昨年末賞与分から支給を始めた。
制度適用の条件は、①代替要員の補充がない、②部門全体の業務量に軽減措置がない、③育休の合計日数が30日以上――の3点。男女問わず子が1歳までの育休取得が対象だ。なお育休期間が1年超など長期の場合には、本制度ではなく、代替要員の雇用や年2回の人事異動など後任の配置を基本としている。
上の図は賞与原資の「配分表」の一部抜粋。引継ぎが困難な業務割合を除いた上で、業務負担に応じた社員の配分割合が記入されている。この割合はどう決めるのか。
「子どもが生まれる1カ月程前から、取得者本人や上司、人事担当などによるサポートプログラムを始めます。複数回の面談などを通じて、引き継ぎ業務のリスト化や、代替予定従業員の選定などのフローを進めていきます。実際に休業に入ると、予定通り引継ぎが進まないことももちろんある。最終的には直属の上司が実績ベースも踏まえて判断し、記入した配分表に従って賞与原資が再分配される流れです」
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