紙や動画、SNSなどの媒体を活用してコミュニケーションを活性化させ、職員の誇りやモチベーション、人材の定着や採用にも結び付ける取組みが注目を集める法人がある。京都を中心に病院や介護事業所、保育所など約180事業所を展開する洛和会ヘルスケアシステム(本部京都市、職員数6200人、以降洛和会)だ。このほど社内報アワード2023(ウィズワークス主催)で部門グランプリを受賞した動画発信をはじめ、SNSを含めた情報発信のポイントを2回に分けて紹介する。
■内製にこだわって発信 育休「取って良いんだ」
医療・福祉を中心に多くの事業所を展開する洛和会にとって、個々の部門や部署間をつなぐ組織内コミュニケーションは重要な課題。特に注目されているのが動画による情報発信だ。企画広報部門の杉岡ゆき乃主席係長はこう話す。
「外注業者ではできない組織の中から見た情報発信にこだわり、紙の社内報やSNSも含めすべて内製で制作しています。動画制作も10年以上前から専門職員が担当しています」
このほど「社内報アワード」動画社内報部門でグランプリを受賞した『ウクライナへ届け』は、ロシアによる侵攻直後に姉妹病院としての協定を結ぶキーウのクリニカ第10病院へメールでの連絡を試みた職員らに焦点をあて、医療物資の緊急支援を実現するまでを追った映像だ。杉岡さんは制作の背景について、「関わった職員の思いを他の職員にも知ってもらいたかったということが一番です。京都を中心とした地域に根差した法人ですが、一人ひとりの職員の思いや志は誇れるものだということを、これから働く人たちにも届けられたら」と話す。
「動画やSNSは、伝えられる情報量が多いのがメリット。特に2022年に理事長が交代してからは、デジタル面での発信が加速しています」と話すのは小林拓磨次長。同じくアワードでブロンズ賞を受賞した『らくわびと』は、矢野裕典理事長自身が様々な人や現場を訪れるシリーズ映像だ。
例えば「#11イクメンをめざして!」(写真)では、22年春に15日間の育休を取得した矢野理事長の実際の育児風景の映像を盛り込み、若手男性職員と育休について対談する内容。制作に携わった中島春輔副係長はこう話す。
「育休に入る理事長に小型のカメラを渡して育児の風景を撮ってもらい、復帰後に男性職員との対談を企画しました。動画を公開した年の男性育休取得率が前年より上がるなど、実際の成果にもつながっています」
洛和会の男性育休の推移をみると(図)、動画を発信した22年度の取得者数は41人で、前年度に比べて約2.7倍と大きく上昇していることが分かる。小林次長は「トップが実践することで男性職員に『育休って取っても良いんだ』と思ってもらえたことが数字に表れている面はあるでしょう。『普段見られない(理事長の)一面を見ることができた』という声もありました」と手応えを感じている。
■行動指針作成を映像化 現場のニーズ大事に
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