木曜日, 4月 3, 2025
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転勤文化の行く末は(山本圭子)

■連載:人事考現学(著者:山本圭子 法政大学法学部講師)

年明けはいただいた年賀状をもとに、例年サボりがちな住所録の修正作業をした。今年は、「転居しました」というお知らせが例年より多かった。卒業生の年賀状では、結婚しました、家を購入しました、子どもが産まれましたと嬉しいお知らせが付いてくる。

「残業代が支払われない立場になりました」と書き添えられていると、栄転の照れ隠しだろうが、役職手当の水準次第では家計は大変だろうと思う。

それにしても、「転勤」が多いこと。子どもの写真付き賀状に、この言葉が添えられると、家族の苦労はいかばかりかと思う。「単身赴任です」、「〇年ぶりの家勢揃いです」というのもあった。

この2年余りのコロナ禍で、リモート勤務が定着し、原則はリモート勤務、オフィス縮小、個々人の机はなくフリーアドレスのところもあるときくが、結局、転勤がなくなったわけではなさそうだ。この時代に転居転勤は企業経営上必要なのだろうか。

近時、パート・有期雇用労働者と正社員との均等・均衡処遇の文脈で、「住宅手当」が争点となる裁判例が注目されてきた。裁判例は、手当支給の趣旨・目的、実際の転居転勤の有無について正社員と有期雇用労働者との間で相違があるかによって事例判断をしている。リーディングケースのハマキョウレックス事件では、転勤・出向の有無の相違があるから、住宅手当の有無の相違は不合理とはいえないとした。他方、正社員のうち転勤がない雇用管理区分があるのに正社員のみに住宅手当を支給していた日本郵便(東京)事件では、相違を不合理としている。こうなると、月々の住宅手当支給とするか、転勤時の転居費用補助とするか制度設計が悩ましいところだが、月々の手当カットは不利益変更でもあり従業員を納得させるのは難しかろう。

少し前に、勤務地限定、職種限定、勤務時間限定といったいわゆる「限定正社員制度」がワークライフバランスに資すると喧伝されたが、なかなか広まらず、勤務地・エリア限定の総合職を設けたり、育介法上の短時間勤務を短時間正社員とする例にとどまっている。また、限定正社員でも業態変更や拠点閉鎖などで職種転換や転勤を余儀なくされることも有り得るし、無限定社員でも家族の事情などで転勤させられないケースなど、 矛盾が生じている。厚労省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会」では限定正社員制度も俎上に上がっているが解決策は提示されるか。

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