OECD(経済協力開発機構)がこのほど発表した中高年の雇用に関する報告書によれば、採用担当者は45~64歳の労働者の中途採用に後ろ向きだが、実際に雇用した際のパフォーマンスは89%が若年層と同等かそれ以上と評価していた。パフォーマンスを高く評価しつつも採用に後ろ向きという「パラドックス(逆説)」が生じていると指摘した。一方で中高年労働者の課題として、新たなスキルの習得に比較的後ろ向きである点もあげている。
OECD加盟国(現在38カ国)の労働年齢人口に占める45~64歳までの割合は、1990年の28%から2023年には40%に上昇。「労働力の平均年齢が今後も上昇し続けることはほぼ確実」であり、中高年者の就業環境整備は世界的な課題となっている。
調査は今年2月から3月にかけて、米英仏独、スペイン、スウェーデン、ルーマニア、チェコの8カ国の就業者・失業者計6029人と、採用担当者1510人の回答を集計した。
採用担当者に、年齢階層別に中途採用するか否かを尋ねたのが下の図。「間違いなくするだろう」の割合は、20代が39%、30~44歳で47%だが、55~65歳では13%と急激に落ちている。報告書は「年齢差別的な慣行が残っている」としつつ、「中高年者はイノベーションへの意欲と寛容性の両方が欠けていると認識されている」とも指摘する。
一方、実際に中途採用した45~64歳の労働者について、44歳以下の若年層と比較して「長期継続的な勤務」「全体的な仕事のパフォーマンス」「迅速に学習する能力」の3点を尋ねた結果が下図だ。中央の「仕事のパフォーマンス」では、89%が若年層と同等かそれ以上と回答した。
報告書は、高年齢労働者の雇用経験のあるグループでは、経験のないグループに比べ採用意欲が大きく高まる点にも言及。採用時と実際の勤務評価が食い違う「パラドックス」を指摘している。
他方で、実務経験を積んだ中高年労働者は新たなスキル獲得に向けたトレーニングを過小評価する傾向があるとも指摘。過去3年間にトレーニングを受けた割合は、45歳未満が53%だったのに対して45歳以上は38%にとどまった。この点について、トレーニングを重視する企業側とのギャップが生じていると指摘している。