60代前半での就業率は7割を超え、昇進・昇格で若手を抜擢する人事管理も進むなかで、「年上部下」や「年下上司」の姿は職場で珍しくなくなっている。一方、年功を重視する人事制度や職場文化が残るなかで「やりづらさ」への懸念の声があるのも事実だ。モチベーションの低下や意思疎通の齟齬をどう回避できるのか。
■年上部下は「敬語」より「話を聞く」を重視
サイボウズチームワーク総研が今年5月に行った調査によれば、30~50代の会社員3000人のうち「直属の上司が年下の割合」は規模計で21.6%。従業員規模別にみると、「49人以下」では16.1%で、規模が大きくなるほど割合が高まり「5000人以上」では28.5%だった。
同調査では、年上の部下(正社員)がいる30~50代の課長・部長職1500人と、上司が年下の50代正社員1000人のそれぞれに、「マネジメントとして必要なこと」を尋ねている。
年下上司が最も重視するのは「敬語・丁寧な言葉遣い」で41.9%に上るが、年上部下の同割合は27.7%とそこまで重視していない。一方、年上部下が最も重視するのは「部下の話を聞くこと」で43.2%。以降「適切な判断と意思決定」「部下のミスのフォロー」と続き、この3点に関して年下上司が「実際にしていること」との割合の差はいずれも10%以上開いている。
■「必要なのは情報」 JEEDシンポジウムから
「話を聞く」ことの要望と実態の乖離に関連し、10月12日に高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が行ったシンポジウムでの内容を紹介する。経営人事コンサルタントでビジネスリンク代表の西川幸孝さんは、「年上部下に対する『勘違い』がある」と、次のように指摘する。
「『ベテランだから分かっているだろう』という意識や、『あまり細かく言ってはいけない』といった遠慮が年上部下に対しては生じやすく、必要な情報が与えられていないケースが多い。重要なのは情報提供です」
特に異動で役割が変わるタイミングなど、シニア社員は周囲から「働いていない」といったイメージを持たれて疎外感を感じがちだと指摘した上で、西川さんはこう続ける。
「ベテランであっても担当する内容によって分からないことがあるのは当然です。役割を明確に伝えて期待値を示すことで、モチベーションが高まることが多いと感じています」
シンポジウムに登壇した青山学院大学兼任講師でFeelWorks代表の前川孝雄さんは、上司の捉え方を変えていくことも必要だと提言する。
「上司は『管理職』から、多様な部下の活躍を支援する『支援職』に変わっていくことが求められています。ジョブ型雇用が進むなかで、『人間的に偉いから』ではなくマネジメントのプロとして、上司の役割を位置付けることが大事だと思います」
■「職務行動」については遠慮せず指導も大事
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