国土交通省の審議会が9月にまとめた持続可能な建設業に向けた中間とりまとめには、日本独自の元請・下請関係による契約慣行や、上流から下流への一方向的な価格決定システムへの問題提起が含まれている。諸外国での公共工事における価格決定構造を踏まえ、下請け構造のあり方と調達をめぐる企業の動きを追う。
■米国:元請と下請に上下関係なし
日本の元請・下請関係の特徴の一つに、工事の外注比率の高さがある。木下誠也・日本大学教授の「中小建設業の維持に配慮した建設生産システムのあり方に関する研究」(国土技術研究センター、2015 年)によれば、大手ゼネコン各社の2013 年度有価証券報告書による完成工事原価に対する工事外注比率は、大林組75%、清水建設73%、大成建設72%、鹿島建設70%と軒並み7割を超えている。下請けの形態として実質「斡旋」のみの業者が中間に入るタイプや、労務提供のみの下請けタイプで労務費へのしわ寄せが生じやすいと指摘されている。
例えばフランスの公共工事では分離発注が推奨されており、施行要件として自社施工比率70%以上が要求される。自社内に技術者、技能労働者、設備、機械など巨大な施工能力を保有し、下請けは少ない。
ドイツでも公共工事では分離発注が原則であり、70%以上の自社施工比率が条件とされる場合が多い。一方、英国では日本と同様に元請・下請関係がありゼネコン一括発注が主流だ。ただ日本と異なり大手建設会社が現場労働者を抱えており、その数は増加傾向との調査もある。
またフランスやドイツ、英国など欧州諸国に共通の特徴として、賃金については産業別の労働協約が基本的な条件を規制している。
米国には日本と同様の元請・下請による請負契約関係がある。ただその内容も日本とはかなり異なるようだ。
一般に元請業者は、生産プロセスをコーディネートするリーダー的な役割を担う。下請業者の自立性は高く元請・下請間に上下関係はないという。リスクの分担や、互いの権利・責任が明確化されているのも特徴的だ。公共工事では直雇用による自社施工の割合が10~30%要求され、特に連邦政府の予算が入る工事では50%以上が求められる。元請建設会社はこの条件を満足するために各地域・職種ごとの労働組合と契約し、組合所属作業員を自社の従業員として賃金台帳に登録するとともに、基本的な施工機械は全て自ら保有して施工を行うという。
■国内企業でCSR調達への関心高まりも
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