■高い支給額の長期休業に誘導
社員の行動変容を促す手法は多岐に渡るが、経済的不安を払拭する意味で即効性が期待できるのが各種手当の新設・拡充だ。法改正に対応するため、特に育児関連の手当を充実させる企業も多いが、人材の確保・定着に繋げたいという思惑もありそうだ。
家具・事務機器の製造販売を手がけるイトーキ(東京都中央区)は7月1日から、新たに「育児休業復職支援金」の支給を開始した。「男性育休100%宣言」に賛同する同社だが、直近の22年時点の実績が45.7%にとどまっていることを重く受け止め、安心して育児に専念してもらうために新たな手当の導入に踏み切った。
原因分析のために実施した社内アンケートの結果、育児休業の取得を阻む要因の一つに「収入の減少」が浮上した。そこで性別を問わず、育児休業取得後に復職した直接雇用する全社員を対象にした手当を新設。支給額は育児休業の取得期間に応じて、「15日以上4週間未満」を5万円、「4週間以上12週間未満」を10万円、「12週間以上」を15万円と3通りに設定している。
セガ(東京都品川区)は7月1日から、「ファミリーサポートプラス制度」を導入。育児・介護を行う日本の従業員をサポートする制度で、特に育児支援の手当の新設・拡充に着手している。
まず「育休復職支援金」を新設し、通算で育児休業を10日以上取得した場合に20万円を支給する。また「出産・子育て支援金」についても、子どもが誕生した際に1人当たり30万円支給するよう拡充。このほか、育児・介護の事情に応じて遠隔地での就業を容認する「遠隔地リモート就業制度」、介護に特化した「相談窓口」を新設している。
産業機械を開発・製造する技研製作所(高知県高知市)は7月1日から順次、グループ企業とともに育児休業の取得を推進する社内制度を拡充した。育児休業を3カ月以上取得した社員に月額5万円、最大で15万円まで支給していた「育児休業支援金」について、支給期間を最長12カ月まで延長。また産休とともに育児休業を賞与の減額対象期間としていた取扱いについて、9月から産後8週間に取得した育児休業で4週間までは賞与を支給するよう改めた。
化粧品を製造販売するポーラ(東京都品川区)も7月1日より、社内制度に「育業復帰サポート手当」を新設。育児休業を3カ月取得した従業員には一括で手当を支給するなど、復帰に伴う一時的経済負担の軽減に繋げるもので、性別に関係なく支給するよう改めた。
育児支援以外でも、施策の効果を確かなものにするために、新たな手当の支給に乗り出す事例もみられる。
不動産投資支援事業を展開するフェイスネットワーク(東京都渋谷区)は7月分の給与から、社員の健康増進の取り組みを応援するために「健康促進手当」を上乗せして支給することを決めた。
健康経営の考え方に基づき、新たに禁煙対策を強化。まず全社員にヒアリングを実施し、現在の喫煙の有無を確認した上で、非喫煙者とともに喫煙者であって禁煙の意志のある社員に「非喫煙宣言」をしてもらう。この宣言を行った社員に月額2万円の手当を支給し、健康増進のモチベーション向上に繋げる考えだ。