水曜日, 12月 4, 2024
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A型事業所と共に進める障害者雇用 モルツウェル 個への対応力と生産性への挑戦(後編)

来年4月に民間の法定雇用率が2.5%へ引き上げられる障害者雇用をめぐっては、職務環境づくりや定着率に課題を抱える企業も少なくない。前編で高年齢者雇用の取組みを紹介したモルツウェル(島根県松江市、従業員数120人、高齢者向け食品製造販売)は、障害者雇用率5%を超え、過去3年で採用した障害者の1年後定着率は100%。その背景には、就労継続支援A型事業所との継続的な社外連携の取組みがあるという。野津昭子専務取締役は、一人ひとりの社員にまず「期待すること」から始まると力を込める。

野津昭子 専務取締役

■利用者→支援者→直雇用へ 社外連携を推進力に

同社の障害者雇用のきっかけは20年前のこと。高齢者向け食品事業を始めた2003年に近隣の養護学校から声を掛けられ、実習を受け入れた。実習生は発達障害がありコミュニケーションは少なめだったが、作業は早くて丁寧だったため雇用が決まり、以来養護学校からの実習は継続的に受け入れている。

全社的な取組みをさらに推進させたのは2017年頃、就労継続支援A型事業所などを運営する、そらまめらんど(松江市)との連携だった。地域の経営団体のイベントでの出会いを機に野津さんは同社の勉強会に参加し、また福井桂代表を招いてのモルツウェル社内勉強会(写真)などを継続的に実施。障害者雇用を支える社内理解の醸成を進めた。

A型事業所を運営するそらまめらんどの福井桂代表(中央)を招き、就労困難者を育成する上での経験や専門的な知識に基づいて、人材育成のポイントを学ぶ「がちあげ勉強会」を社内で実施

業務面では、介護施設での厨房業務などを一部委託。モルツウェルの人手不足緩和とともに、雇用契約に基づくA型事業所での自立支援事業を進めるそらまめらんどにとっても、継続的な受託業務は経営安定化につながった。

連携を通じて直接雇用に結びついたのが、発達障害を持つYさんの事例だ。大学院卒業後に就職活動がうまくいかず、二次的に不安障害を発症し、6年前からそらまめらんどで支援を受けた。厨房業務では当初洗浄のみを担当していたが、作業の迅速さと正確性に加え積極的な姿勢に対し、モルツウェルから「もっと色々な業務ができるのでは」との評価を受け、盛り付けを含めた配膳全般を担当。その後そらまめらんどの職員(支援する側)を経て、この春モルツウェルへの就職を選んだ。

造係長から指示を受けるYさん(右)。係長からの信頼も厚いという
個々の特性に合わせ、業務全般で障害を持つ社員が活躍

野津さんは「期待、機会、鍛えるの3つの『き』が重要」と指摘し、こう続ける。

「一人ひとりの特性を理解することが大事なのであって、『できないから守ってあげなければ』といった先入観は逆効果。むしろその人が持つ力に期待し、鍛えられる機会をつくることが重要です。それは健常者でも変わりません」

個への対応力に基づき一人ひとりが自らを鍛え、成長できる機会をつくるために、同社は職務の選定・創出をはじめとする職場環境づくりに注力する。

■「仕事がない」をどう解決? カギは職務の見える化

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