新しい時代の働き方に関する研究会のこれまでの議論、前回紹介した労働者の働き方のニーズ調査から、労働基準法をはじめとする関係法制の見直しの方向性を探る。
研究会の構成員の多くが要求しているのは、法制度に対する労使自治によるチェック機能の強化。具体策として、労使協定や意見聴取などで、過半数労働組合とともに重要な役割を担う「過半数代表者」制度の見直しを求める声が大勢を占めている。
過半数代表者制度は形式化や形骸化が指摘されて久しいが、使用者が一方的に指名したり、課長など管理職クラスを指名したりと、選出方法の違法性が問題視されている。廃止に踏み込まないまでも、実質的なコミュニケーションが行われることを大前提に、過半数代表者から「労使委員会」制度への移行を促すことが有力視される。
仮に労使委員会制度を拡充するのであれば、民主性・適格性の担保が不可欠。過半数労組も含め、協議のプロセスの透明化も図った上で、労使の判断で解除ができる労基法などの一律規制について、範囲の拡大も視野に入れて検討することも考えられる。
このほか労使コミュニケーションを活性化させる手法として、就業中の組合活動を容認すべきとの意見や、従業員の取締役会レベルへの参加を促す従業員代表制を導入すべきとの提案も出された。
デジタル技術や市場機能を活用した新たな法規制の形として、研究会では情報開示の拡充を求める声も多い。「企業の自主的改善行動を促進する」と同時に、「求職活動を行う労働者による最適な選択を支援する」、さらに「行政の効率化に寄与する」といった複数のメリットが期待できる方策として注目度は高い。
開示する情報については、平均残業時間や平均有給休暇取得日数、テレワーク利用率・利用日数、雇用形態別の研修時間・研修費用などが案として出されている。男女賃金差の公表に倣い、格差の理由を明記できる方向で制度設計することもあり得る。
特に「市場の目にさらされる自浄作用効果は大きい」との認識で一致しており、情報開示が法規制の手法の主流となる日はそう遠くない。