65歳以上の人口比率(高齢化率)全国5位の課題先進地域である島根県で、事業と雇用の双方で課題に取り組む企業がある。福祉施設向け調理済み食品の製造販売、在宅高齢者への配食・生活支援サービスなどを展開するモルツウェル(島根県松江市、従業員数120人)だ。60歳以上の社員が約3割を占める同社は、先進的な継続雇用制度や現場からの職場改善の仕組みを通じ、高年齢社員を含め全員参加で生産性向上を目指す。取組みの詳細を野津昭子専務取締役に聞いた。
■客観的な数値で業務改善 ICTで社内情報活性化
「『高年齢者雇用で生産性が低下する』というのは本当なのか、試してみたかった」と野津さんは話す。同社では方針の共有や職場での業務改善、会計情報の社内開示など、高年齢者を含めた社員全員が経営に参加し、科学的に考える仕組みを構築しているという。
従業員数120人のうち正社員は38人。食品製造部門などではパート・アルバイト社員も多い。60歳以上は計31人で、60~64歳が14人、65~69歳が11人、70歳以上が6人と高年齢社員が活躍している。最高齢は83歳だ。
定年を65歳に引き上げたのは2012年。法律に先駆けて再雇用は「希望者全員70歳まで」とし、70歳以降は解雇規定に抵触しない限り年齢の上限なく雇用継続する。
賃金制度では「無期雇用と有期雇用の待遇差を設けない」との考えで、職務内容が同じなら賃金テーブルは同じとする仕組みを導入。定年前の正社員と再雇用嘱託社員との待遇差を解消した。
職種や年齢に関わらず、日常的に広く現場で活用されている仕組みの一つが「業務改善制度」。一例として、75歳のYさんと63歳のMさんがペアで提案した改善報告書が図だ。
画像や説明、数値を活用した客観的な記載が特徴で、報告書は提案者を中心に、他の総合職社員とも協力して作成する。改善提案には報奨金を支給し、内容によって支給額を調整するなど丁寧に評価している。現場からの提案は、毎月10本前後出されているという。野津さんは「『考えてはいるけど、どうせ言っても無駄だよね』というのをとにかく無くしていきたい」と力を込める。
社内情報の共有には、ITを積極的に活用している。下図は、ビジネスチャット「LINE WORKS」での情報共有のシーンだ。チャットは、全社員や部門、チームといった区分ごとにグループが作成され、リアルタイムで業務内容を共有している。写真のように、高齢者宅への配達やサービス支援を担う高年齢社員も含め、個別のスマホでチャットシステムを活用している。チャットを通じて個々の業務が見える化することで、効率性の向上や、利用者へのサービス向上に向けた社内コミュニケーションにも役立っていることが窺える。
■社員が業績への寄与を実感 1人当たり付加価値開示で
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