コロナ禍を機に、首都圏から地方へ本社を移転する動きが活発化している。特に、企業の「脱東京」の流れが鮮明になり、この流れが継続するのかが注目を集めている。
帝国データバンクの調査によると、2022年に東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県の首都圏から地方に本社や本社機能を移転した転出企業は前年比16件減の335社、反対に転入企業は同70社減の258社を数えた。転出が転入を上回る「転出超過」を2年連続で記録しており、転出超過77社という規模は過去20年で最大となった。
首都圏と一括りにしているが、1都3県を詳細にみると傾向は大きく異なる。埼玉が68社と全国最多の転入超過となったほか、神奈川と千葉も順に50社、34社の転入超過を記録。これに対して、東京だけが229社の転出超過となっており、企業を引き寄せる東京の吸引力が相対的に低下していることを裏づけた。
調査で注目したいのは、首都圏外への転出企業の業績動向だ。転出企業のうち「移転年に減収」だった企業割合は20年に57%を占めていたが、21年に44%、22年に至ると35%まで低下し、「増収」の42%を下回った。コロナ禍当初は業績悪化を理由にした地方転出が多かったが、直近では増収企業でさえもオフィス賃料などのランニングコスト削減のために、積極的に転出している可能性が読みとれる。
企業の地方転出の動きが鮮明となるなかで、働く側のニーズは変化しているのだろうか。ライボの調査機関「JOB総研」の調査では、社会人のうちの59.8%と約6割が「地方移住に興味がある」と回答。また44.7%と5割弱が、地方移住ワークを「今後検討する」と回答した。
一方、マイナビの調査によると、24年3月卒業予定の大学生・大学院生の地元(Uターンを含む)就職希望率は62.6%。23年卒と同率だが、20年卒の59.2%、19年卒の59.5%を大きく上回る。
テレワークやWEB会議の浸透が、コロナ禍前より地方で働く懸念を緩和していることを示唆。地価高騰が続く東京に本社を置く必要がないとの共通認識が醸成されれば、その先に「地方創生」がみえてくるかもしれない。
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