業務による心理的負荷評価表が、刷新される見通しとなった。労働基準監督署での精神障害の労災認定の判断に利用する評価表だが、具体的な出来事ごとに労災認定になるラインを明確にしており、企業の実務で活用したい。
新評価表では、具体的な出来事を現行の37項目から29項目に減らし、Ⅲを5項目、Ⅱを19項目、Ⅰを5項目に再編した上で、具体的出来事ごとに負荷の強度を強・中・弱に判断する具体例を記述。労災認定に至らない平均的な負荷の強度がⅡやⅠの具体的な出来事でも、労災認定される強の具体例、つまりこの一線を越えてしまうと労災認定になってしまうラインを明確化した意義は大きい。
管理職を含めて、社内研修で全社的に労災認定ラインを情報共有しておけば労災防止に寄与するだろう。トラブルの事後対応を定める際にも、大いに参考になる。
新評価表に沿い、具体的な労災認定のラインをみる。
平均的な負荷の強度がⅡの「顧客や取引先から対応が困難な注文や要求等を受けた」では、「通常なら拒むことが明らかな」注文や要求を受けて、「他部門や取引先と困難な調整に当たるなどの事後対応に多大な労力を費やした」場合を強の具体例に明示。またⅡの「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」では、迷惑行為が「治療を要する暴行」「執拗な人格を否定する言動」の場合や、これに至らないまでも「相談後も会社が適切な対応をせず改善されなかった」場合を強の具体例に示し、カスタマーハラスメントでの労災認定を視野に入れる。
ⅢからⅡに下げられた「多額の損失を発生させるなど仕事上のミスをした」だが、ミスが「倒産など会社の経営に影響する重大なもの」をはじめ、重大ではないが「ペナルティを課されたり、職場の人間関係が悪化するなど事後の対応に多大な労力を費した」などを強の具体例に掲げる。
さらにⅡの「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」では、業務の従事が「急遽」で、「感染被害が拡大して死の恐怖等を感じつつ業務を継続した」場合を強の具体例に明示し、労災認定することを示唆している。
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。