金曜日, 12月 5, 2025

企業存続のための処方箋(佐藤裕太 社労士)

■M&Aから学ぶ労務管理―100年企業を目指す実践編④

佐藤 裕太(さとう ゆうた)
TRY―Partners㈱代表取締役。社会保険労務士。東京都社会保険労務士会・千代田支部・開業部会委員。経営者のパートナーという役割を使命とする社労士事務所も運営。迅速で丁寧なデューデリジェンス(労務DD)には定評がある。M&Aシニアエキスパート。

貴方の会社は、5年後も確実に存在していると言い切れるでしょうか。

中小企業庁によれば、経営者の平均年齢は60歳を超え、約半数が後継者未定です。経営が黒字であっても、後継者が見つからず廃業に至るケースは企業の高齢化とともに加速しています。究極のところ人材に恵まれず危機に陥るのです。

■企業診断の重要性

企業の存続危機は、単に経営者の個人的な問題にとどまりません。従業員のみならず、その家族の生活も存在し、地域経済の雇用基盤に直結しています。ゆえに、企業の存続力を診断することが極めて重要になります。

ところで、企業の存続力を測るうえで欠かせない監査が、労務デューデリジェンス(労務DD)です。労務DDの登場シーンは、決してM&AやIPOの場面だけに限られません。すなわち、平時における内部健全性の診断ツールとして活用する、または、その視座を持つことに大きな意義があります。

下記図表をご覧ください。自信を持って「自社は全て問題なし」と言えるでしょうか。


労務DD項目は、平時においては真の目的を確認することが重要です。例えば、②の就業規則の作成目的は、単に助成金取得や強制法規対応ではありません。すなわち、組織の規律を明確にし、企業と従業員の信頼関係を維持するための基盤整備が真の目的です。④の残業代の支払いも、単に法律遵守の問題にとどまらず、従業員の帰属意識と企業の信用力構築に寄与します。

■専門家との関わり

経営者が経営課題を一人で抱え込むと、意思決定が属人的になり、いわゆるワンマン経営に陥るおそれがあります。したがって、外部専門家との連携は不可欠です。

更にはその関わり方も検証すべきといえます。例えば、社労士などの士業への業務依頼を単なる作業代行者へのアウトソーシングと考えていないでしょうか。AIの浸透により時代は急速に変化しており、法令遵守を受け身で行うだけでは、優秀な人材も企業も生き残れません。

経営者が信頼できる専門家とともに自社を適正に診断し、制度及び組織の両面から企業価値を高めていくことが求められています。

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