
1996年弁護士登録。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー弁護士。経営法曹会議常任幹事。人事・労務問題全般の助言のほか、セクハラ、パワハラなどハラスメント問題に関する社員研修、管理職研修なども数多く行う。
■ハラスメント対応の術を身につける 第5回
前回までのハラスメント対応の要点を踏まえ、今回から裁判例を通じた具体的な留意点などを述べていきたい。
まず取り上げる裁判例はA市事件(最三小判平成30年11月6日)である(表)。A市の一般職に属する男性の地方公務員(一般廃棄物の収集、運搬の業務に従事)Xが、制服を着用して頻繁に利用していたA市内のコンビニエンスストアで、かねてから女性従業員を不快にさせる不適切な言動をしていたなかで、勤務時間中に店内で女性従業員にわいせつな行為(本件行為)をしたことを理由に、停職6カ月の懲戒処分をA市から受けた。この処分は重きに失するもので違法であるとして、A市に対し処分の取消を求めたものである。

■原審覆した最高裁 笑顔は客だから
一審(神戸地判平成26年11月24日)は当該処分は重すぎるなどとして処分を取消す判決を下し、二審(大阪高判平成29年4月26日)も一審判決を相当としたため、A市が上告した。
最高裁は、当該処分にA市の裁量権の逸脱・濫用があるということはできないとして二審判決を破棄し、一審判決を取り消してXの請求を棄却する判決を下した。
最高裁は判決の理由のなかで、Xと女性従業員はコンビニの客と店員の関係にすぎないから、女性従業員が終始笑顔で行動しXによる身体的接触に抵抗を示さなかったとしても、それは客との間のトラブルを避けるためであったとみる余地があり、身体的接触の同意があったとしてXに有利に評価することは相当でないとした。
また、店舗のオーナーはA市に本件行為を申告したものの、女性従業員もオーナーもXの処罰を望まなかったことについて、それは事情聴取の負担や店舗の営業への悪影響などを懸念したことによるとも解されるとして、本件処分の違法性を基礎づける事情として考慮すべきではないとした。
■BtoBのセクハラ 現行指針に措置義務
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