■産業医の判断に合理性ある 労働者の同意取り主治医から情報提供
双極性感情障害で休職した労働者の復職判断で主治医と産業医の意見が対立。生活のリズムが確立されておらず、強い薬剤を多種類服用していることから復職が困難との産業医の判断に合理性があると判断。主治医からの情報提供、生活リズムを確認するという復職の手続が評価された判例となっています。
■事件の概要
労働者派遣業や電気通信事業等を営むY社に営業職として勤務していた原告は、双極性感情障害を発症して休職。休職期間の満了で自動退職となりましたが、復職可能として雇用契約上の権利を求めました。
平成26年3月以降に、精神の不調で要治療の状態にあった原告は平成30年7月から欠勤と治療の必要性について会社と話し合い、会社は9月から令和2年2月までの休職命令を発令しました。平成30年9月に病院から双極性感情障害との診断を受けています。
令和2年1月、原告は復職可能と判断した主治医の診断書を送付。双極性感情障害で通院中だが復職可能と記載されていました。
産業医は、1回目の面談で再度の面談が必要と判断したため、会社は休職期間の末期を1カ月延長しました。原告は面談日に無断で姿を見せず、日時を変更した経緯があります。
産業医は原告の同意を得た上で、主治医に医療情報の提供を依頼。主治医は就業上の配慮に関する意見として、機械作業や自動車運転は不可だが、労務軽減した形での復職は可能と回答しました。
2回目の面談で原告は指示された生活のリズム表を持参せず、産業医が引き続き治療経過観察を要すると回答。産業医が復職可能性に消極であったことから、営業部長という担当も考え、就業規則の「休職前に遂行できる程度に回復」したとは言い難いとして退職措置を行いました。

■判決の要旨
判決は会社の就業規則の治ゆとは休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に傷病等が回復すること、あるいは復帰後ほどなく回復が見込まれること、との前提に立ち、通常の業務を遂行できる程度に回復したかについては、多種類の薬剤を投与されていること、復職に向けた取組がなく主治医から外出するように指導されていないことを指摘。
産業医が面談し、主治医から医療情報を受けた上で、復職訓練が行われていないことや面談日に無断で姿を見せなかったこと、生活リズム表の提出がないこと等から復職が可能と判断していないことや平成26年3月ごろに精神的不調を訴えて以降も治療を継続していたこと、配置される部門は複雑な対人関係等を求められること等を総合して、産業医の判断は「合理性を有する」と判断し、原告が休職前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していたことはもとより、復職後ほどなく上記の健康状態に回復することが見込まれる状態にあったとは言い難い、としました。
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