一定の管理職枠を女性に割り当てる「クォータ制」や、階層ごとにきめ細かく設計された教育研修を通じて、3年ごとに計画的に女性管理職比率を引き上げている大東建託(東京都港区)の「女性育成プログラム」。その仕組みが実際に動いていく上で「特に効いていると感じるのは、管理職や役員、そして現場の社員を巻き込むためのコミュニケーション施策。制度を有効活用できるかは、最後は職場にかかっている」と、湯目由佳理ダイバーシティ推進部長は力を込める。
■組織横断ワークショップ 職場から改善提案も
2021年に始まった「女性育成プログラム」を通じて、4.9%だった女性管理職比率は24年4月に6.5%に上昇し、27年までに8%に引き上げる目標を設定した。
プログラムと並行して21年に立ち上げたのが、本社と支店の垣根を越えた社内公募によるワークショッププログラム「PERSO-RES(パソリス)」だ。
建物賃貸の企画・建築や不動産仲介管理を行う同社は、全国に支店を展開する。各支店と本社協働でダイバーシティを推進していくために、組織を横断して定期的に開くワークショップで自らの困りごとや改善提案などについても話し合い、得たものを各支店に持ち帰ることで視点や人脈の広がりに結び付けるのがプログラムの狙いだ(表)。
「ダイバーシティをテーマに手挙げ形式で希望者を募ったので、当初は育児を抱える事務系の女性社員などが多くを占めるかと思っていましたが、蓋を開けてみると工事部の男性部長や支店長などの役職者、職種も営業や設計職を含めて幅広い人が集まりました」(湯目さん)
メンバーは概ね30~40人。1年間かけてワークショップ形式で学び、時には議論しながら具体的に会社へ改善提案することもある。1年ごとにメンバーを公募し、現在は3期目となっている。基本的にオンライン形式でワークショップを行うため、空間的な制約がないことも参加が広がる背景となっているようだ。
第3期はメンバーの目的ごとに3つのグループに分け、テーマやゴール(目的)についてもメンバーと本社ダイバーシティ推進部とが連携しながら設定するなど、自由度の高いワークショップとなっている点が特徴的だ。
「上司の立場の社員がメンバーに入っているので、現場の声を単なる不満やわがままとしてでなく、困り事や課題として捉えていく視点は大事ですね。今期はグループによって、時間をかけて丁寧に提案まで持っていく『提案型』、特定のテーマで現場の意見を伝え一緒に考えていく『意見型』、月ごとにテーマを決めて自由に議論する『ディスカッション型』と、多様な形で関われるようにしています」
女性育成プログラムとの関わりについて湯目さんは、「ダイバーシティの推進や、会社を良くしていこうと考える社員が、それぞれの職場にどれだけいるか。パソリスを通じそうしたコミュニケーションが生まれることが、スピード感を持ってプログラムを進める上でも大事」と指摘。さらにこう話した。
「他の部署の社員と関わりを持つことは視野を広げる上でも重要です。他部署との視点の違いから、自部署=会社と思っていたことに気づくこともあります。社外も含め『外部』の視点を入れることは、パソリスだけでなく、女性のキャリア意識醸成に向けた教育研修においても重視しています」
■多様な声聞こえる組織へ 4つの軸でコミュニケーション
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