火曜日, 9月 17, 2024
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人的資本経営の目標を「宣言」 人事労務の現場に落とし込む アサヤ【後編】

人をコストでなく投資として捉える人的資本経営への関心が高まるが、特に中小企業にとって具体的な人事労務施策にどのようなメリットがあるのか。漁具・船具販売のアサヤ(宮城県気仙沼市、従業員数82人)は、3つの経営理念を具体的な施策や目標に落とし込んだ「アサヤ人的資本経営宣言」を毎年発表。自社だけでなく、地域の他企業とつくる「気仙沼人事研究会」で課題を共有し、宣言や対策に結び付けているという。廣野一誠社長に聞いた。

アサヤ株式会社の廣野一誠 社長

■地域で採用力アップへ 企業合同で「人事研究会」

「地域の課題感として大きいのは人手不足。人口減少のなか他企業も同じ思いを抱えていると感じます。共通の課題にお互い協力し合える『気仙沼人事研究会』を2022年に発足しました。人事やバックオフィス関連の業務は、営業面などと異なり露骨な競争関係となるわけではないので、お互いがレベルアップすることで地域としての採用力を上げ、人口流出を少しでも食い止められたらと考えています」

「気仙沼人事研究会」で2023年3月に行われた報告会。1期生として参加企業4社が半年かけて課題や学びを共有し、各社の人的資本経営の取組みを発表した。現在第3期が進行中。(写真提供:アサヤ)

こう話す廣野社長は、自身もユニークなキャリアの背景を持つ。学生時代を過ごした東京都内でITコンサルタントとしての勤務を経て、2014年に家族で郷里に移住しアサヤに就職。21年に家業を継ぎ、7代目社長に就任した。

気仙沼に戻ってすぐの15年頃、まず手掛けたのが経営理念(図1)を言葉にすることだったという。

「元々社員みんなが大事にしているけれど、言語化されていなかったものを聞き出して、言葉にしたという感じです。例えば『社員が主役』は先代社長の言葉。周囲があれこれ言っても、結局本人がその気になって一所懸命取り組み、それが楽しくなければ仕事は進まない。社員が『主役』として働けるためのサポートやアシストが重要、という理念です」


図にあるようにバリューとしての「社員が主役になれる仕事」が起点となり、ミッションである「漁民の利益につながる、良い漁具を」や「三方よしの三百年企業」というビジョンにつながると整理した。前出の人事研究会のなかで練り上げた「アサヤ人的資本経営宣言」(以下、宣言)も、経営理念の考え方がベースとなっていることが窺える。

具体的な施策として、宣言のなかで前年目標の進捗状況をまとめたのが図2だ。研究会の重点課題でもある「②人材採用・定着面」に着目すると、前編で詳しく紹介した「採用チーム立ち上げ」のほか、「初任給の大幅改定」「育児特別休暇制度」の創設と、宣言の方向に沿って大幅に人事施策の舵を切ったことが分かる。また未達成の目標を、今後に向けて見える化している点もポイントだ。


「23年の宣言ではアクションプランが山盛り状態でした。賃上げなど経営側で完結する施策はそれでもよいのですが、人材育成や組織運営などは現場の理解・浸透が追い付いていなければ絵に描いた餅になります」と廣野社長。社内の意見や状況を反映し、24年の宣言内容ではさらに目標を絞り込んで、施策を具体化させた。

■3年後の姿を指標化 ロードマップで将来像示す

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