「デジタルトランスフォーメーション」をDXと称します。DXは、企業が顧客の視点で新たな価値を創造していくために、ビジネスモデルや企業文化の「変革」や「変容」に取り組むことです。
企業内でのデジタル化は、紙や電話を使用するアナログ業務からの脱却から始まります。勤怠管理として出勤簿にハンコを押印する等の段階では、デジタル化は未着手とされます。この段階の企業も日本では散見されます。
一歩進んだ段階が、「デジタイゼーション」です。業務を標準化して事務負担を軽減する段階です。顧客との連絡手段はFAXから電子メールに切り替えられます。しかし、これもDXの実現にはまだ遠い段階です。デジタルツールやインフラを活用して業務効率化を行う「デジタライゼーション」で、デジタル化はある程度実現しますが、まだDXの段階ではありません。多くの日本企業がこの段階かもしれません。
DXは蓄積されたデータを活用し販路拡大や新商品を開発してこそ、企業の付加価値が向上します。この段階まで来ないとDXが実現されたとはいえないのです。ちなみに賃金改革(CX「賃金トランスフォーメーション」:著者の造語)も、DXの推進にともなって、さらなる企業の付加価値向上が期待できるのです。
日本は、デジタル競争力ランキング(2023年)では、64カ国中32位。とくに人材/デジタル・技術スキルが63位と低く、これが全体を引き下げる要因となっています。例えば、情報処理推進機構(IPA)が実施する「ITパスポート」(国家資格)という、残念ながらデジタル化の基礎的なレベルの知識すら保持していない者が、企業や役所のトップにいること自体が日本の現状をよく表しています。