生産性が高いとされるスイスから来日した知人から、「日本ではなぜキャッシュレスが進んでいないのか」と聞かれて、返答に困ったことがありました。昭和の時代に現金を持ち歩くことが日常とされた日本で、キャッシュレス化が遅れているのは確かなようです。諸外国からは日本のある種の「現金崇拝主義」に違和感がもたれているのです。インバウンドの観光客もキャッシュレス化が遅れた日本の現状に大変がっかりするようです。ちなみに韓国のキャッシュレス化率は2015年時点ですでに89%でした。
昭和時代のアメリカでのスーパーでの支払いは、現金かレジで小切手を切って支払うのが日常でしたが、令和になって訪れたアメリカでは、プラスチックマネー(デビッドカードやクレジットカード)等のキャッシュレスが当たり前になっており、レジに並ぶ時間が大幅に短縮されていました。ある調査では、決済に要する時間を3分の1に短縮できたとのこと。キャッシュレス化を進めた企業では、レジを締め時間も短縮できて、生産性が向上しました。
我が国では、「セルフレジ」が一般的になりつつありますが、いまだにレジが混んでいて、人材不足で係員を減らした店の評判は、下がることはあっても、上がることはありません。その原因は、キャッシュレス決済が諸外国と比べても進んでいないことにあります。レジを締める際も現金の勘定がある限り、時短にはなりません。
スマホネイティブでもある比較的若い世代は、現金を持ち歩かない者が大勢を占めてきています。社員が行う支払いが電子マネーになれば、今後、会社が社員に行う賃金の支払いも電子マネーで行うことを希望するでしょう。解決すべきは、あくまでも「現金にこだわる昭和世代の意識」の壁かもしれません。
政府は、現在20から30%代にあるキャッシュレス化率を今後80%にすることを目指しています。これが実現すれば、企業内でも決済にかかわる分野で時短が実現し、ひいては日本人の働き方にも影響し、生産性が上がることが期待されているのです。