■休業につき過失があるので 民法536条2項の債権を失わない
消費者金融の過払い金回収で有名な法律事務所が、不適切な宣伝で業務停止の行政処分に。雇用されていた弁護士に対して、自宅待機期間中の休業手当相当額は支払いましたが、弁護士は休業中の賃金債権を失わないとして原告となり、民法536条2項の賃金を払うよう訴えを提起し、認められました。
■判決のポイント
被告は過払金返還請求などを主たる業務としている180名の弁護士をかかえる大手法律事務所です。原告は平成29年4から弁護士として雇用契約を締結。同年12月に退職しています。
被告は1カ月の期間に請求申込を行う者に優待を行う、と表示しながら4年10カ月の間、同じ広告を継続していました。このことで消費者庁が景表法の有利誤認表示に該当するとして平成28年2月に被告に対し、広告の是正措置命令。平成29年10月には東京弁護士会が業務停止2カ月の懲戒処分を行いました。
被告は平成29年10月11日から12月10日まで業務停止処分を受けたことで、原告に自宅待機命令を発して休業手当相当額を支払いました。しかし、原告は、民法536条2項により賃金債権を失わないとして、未払い賃金の支払いを求めました。
被告は行政処分と雇用契約上に被告が負う義務とは無関係と反論。2カ月の業務停止処分を予測することは困難なので、履行不能は被告の責めに帰すべき事由と言えないと主張しました。
判決は、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」とは、債権者の故意・過失及びこれと信義則上同視すべき事由と解されるとし、広告表示を掲載した時点で、業務停止処分を含む重い処分があることは十分に予見することができ、それでも継続しているのだから、債務履行不能(休業)について過失があり、民法536条2項の「被告の責めに帰すべき事由」によるものとして、原告の賃金請求を認めています。
■判決の要旨 「債権者の責めに帰すべき事由」 懲戒処分は十分予見できた
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