土曜日, 11月 23, 2024
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勤怠管理システムで人のための余白を(杉野愼)

■勤怠で動き出すDX~人事労務の業務フローをデザインする~⑥

杉野 愼(すぎの・しん)㈱TECO Design代表取締役
▶1982年生まれ、広島大学大学院修了。医療系ITベンチャーでの営業を経て大手社会保険労務士事務所で給与計算やM&A、IT推進事業などに従事。2019年にTECO Designを設立し、600社超の中小企業でのHRテック導入・運用実績を持つ。

勤怠管理システム導入の「改善期」は、導入後の効果を最大限に引き出し、組織全体の働き方の最適化につなげる段階です。そのポイントは、実際にシステムを使いながら適宜必要な改善を行い、組織全体の最適化を目指すことです。そのためには、システムの知識と実務知識の双方を組み合わせ、適切な決断を行う力が求められます。


■完璧を求めず

改善期には、最初から完全自動化のような完璧を目指すのではなく、まずは実際の課題を調査し、必要な修正や調整を行うことが重要です。システムの有用性をどう最大限発揮できるかに着目しましょう。システムを全く使用しなければ、その価値は0点と同じです。満点への誘惑に惑わされることなく、積極的に改善を進めるべきです。

そのためには、システムの機能や操作方法といった知識だけでなく、勤怠管理が実際に業務にどう影響を与えるかの実務知識も重要です。法規制の理解や労働時間の管理方法なども含め、法改正やシステムのアップデートを常にキャッチアップしておくことで、より効率的で効果的な運用が可能になります。

■全体最適を目指す

システムのカスタマイズや新機能の追加、運用方法の変更など、最適解に向けた多くの判断が求められるのも改善期の特徴です。データや経験に基づく「決断力」を高めるためには、前述のシステムと実務の両方の知識を身に付けた上で、組織全体の利益の最大化を目指すことが必要です。間違っても、自身の作業のみが楽になることを優先しないようにしましょう。

労務担当者の負担軽減だけでなく、組織全体の生産性向上の視点、すなわち全従業員の労働環境改善や作業効率の向上といった全体最適の視点から、改善を進めることがポイントです。

■これからの労務へ

人事労務の領域は決してデジタル化が進んでいるとは言えません。「どの企業にも当てはまる一律の回答がない」ということも理由の一つでしょう。しかし、労働人口が減り多様性も進むなかで、労務担当者はこのままでよいのでしょうか。

複雑で不確実で曖昧なことが多い労務領域だからこそ、テクノロジーを最大限活用し「人」の力を最大化するべきです。システマチックに処理できないからこそ、テクノロジーを限りなく活用し「人」のための余白を生み出すことが、これからの労務担当者には求められるでしょう。

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