■残業申請で業務の具体的指示 「労働時間を算定し難い」に該当せず
直行直帰で業務を遂行するМR(医療情報担当者)の事業場外みなし労働時間制の適用がシステムの導入以後、否定された事件です。40時間超の残業申請時に残業時間を明らかにさせ、業務の具体的指示を行っていたこと等から、「勤務の状況を具体的に把握することが困難であるとはいえない」と指摘しています。
■判決のポイント
XはМR(医療情報担当者)として直行直帰で業務に従事していました。上司は週1回、訪問先や活動状況を記載した週報を提出するよう指示していましたが、その内容は業務スケジュールを報告させるものではありませんでした。
平成30年に会社は勤怠管理システムを導入。スマホで出退勤時間が打刻できるシステムで、会社は打刻時点の位置情報も把握できることになりました。令和2年、Xは過去2年間の未払い賃金を請求して訴えを提起しましたが、一審は割増賃金や付加金の請求、就業規則の不利益変更といった請求のいずれも棄却。事業場外みなし労働時間制が適用されるかは「労働者が労働時間の全部又は一部については事業場外で業務に従事し」し、かつ「労働時間を算定し難い」ことを要するとし上で、スケジュールはXに委ねられており、上司が指示したりするものではないことから、勤務状況を具体的に把握することは困難であり、同制度が適用されるとしました。
本判決は直行直帰であること、訪問先や業務スケジュールを指示しなかったことを指摘しましたが、システム導入後は出退勤の打刻時刻に疑問があるときは、上司に報告させて確認することが可能であったこと、月40時間を超える残業が見込まれる場合には、事前に業務と時間を明らかにして残業申請させ、上司から具体的な指示を行い報告させていたことを認定。週報から、業務の営業先と内容を具体的に把握できることも指摘して、「労働時間を算定し難い」には該当しないと判断しました。
■判決の要旨 業務の内容について具体的に指示し報告させていたから
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