土曜日, 11月 23, 2024
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人材確保へ相次ぐ満額回答 松屋、電通総研は10%超賃上げ

■2024年春の賃上げ労使交渉

今春の賃上げ交渉は、大企業が3月を待たずに相次いで満額回答するなど、例年と異なる展開をみせている。自動車や生命保険のみならず、多くが「5%以上」を上回る賃上げを早々に決定。人材確保を見据え、なかには2桁増にまで踏み込む企業も出てきている。

松屋フーズホールディングス(東京都武蔵野市)は4月の改定で、正社員の給与を定昇分とベースアップ分を加味して10.9%相当引き上げる。2001年の上場以降の過去最大の引上げ幅で、人的資本経営の実践によるさらなる成長を目指す。


システムインテグレーションの電通総研(東京都港区)は基本給を平均10.7%、最大で12%の引上げを実施。実際の年収は会社の業績と個人の評価により変動するが、定期評価による昇降給分を含まず年収ベースで最大7%の増額となる。


脱炭素テックのエネチェンジ(東京都中央区)は、正社員と契約社員を対象に、昨年の7.14%を上回る年間約9%の賃上げを行う。信託型ストックオプション報酬も合わせ、今年1月と7月の2回に分けて4.5%ずつ昇給を実施する。


モスフードサービス(東京都品川区)は4月に、正社員などの給与を平均で8%引き上げる。うちベア分は対象者一律で1カ月当たり1万円引き上げた上で、平均3%を上乗せして支給。額と率のハイブリッド型とすることで、若手社員が手厚くなる計算だ。


串カツ田中ホールディングス(東京都品川区)は、ベースアップ・定昇分・手当などを含み、1月分の正社員の報酬から平均5%、最大で16%引き上げた。業績成果に応じて支給される特別手当を合わせると平均8%、最大で18%の引上げとなり、待遇向上という積極的な人材投資を顧客価値と企業価値の向上、さらには外食産業全体の変革に繋げる考えだ。


不動産事業のケネディクス(東京都千代田区)は、従前からの査定に基づく昇降給に加え、2年連続で特別昇給を実施。物価上昇への対応と優れた人材の確保が狙いで、特別昇給を含む全社昇給率は6.3%となる。

すかいらーくホールディングス(東京都武蔵野市)は、正社員を対象にした賃上げを初回交渉で早々に決定。平均で約6.22%の賃上げとなり、ベア分は5%と破格の満額回答を行っている。


不動産デベロッパーのコスモスイニシア(東京港区)は4月に、給与水準を改定。例年の評価による昇給と合わせ、約6.1%増額となる。


非正規労働者の待遇改善についても、早期・高水準の傾向を示唆する。

UAゼンセンは2月末時点で、傘下22組合がすでに労使交渉で妥結したと発表。うち21組合はイオン系で、パートの賃上げ率は全てで7%以上の回答を引き出した。残るダイエーユニオンもパートの賃上げ率7.05%、時給額で81.20円の賃上げを獲得している。


このほか4月から、オリエンタルランド(千葉県浦安市)は、従業員平均で約6%の賃金引上げを実施。またユー・エス・ジェイ(大阪府大阪市)も、クルーなどを担うパート・アルバイトの時給を一律50円引き上げる。



注目を集める賃上げ率だが、中小企業や非正規の賃上げにどこまで踏み込めるか、日本経済の行方を占う意味でも焦点となりそうだ。

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