ほくほくフィナンシャルグループの北陸銀行(富山県富山市)と北海道銀行(北海道札幌市)は、採用応募の可能性のある「転職潜在層」へ持続的にアプローチすることで中途採用を強化する仕組みを始めた。同社を退職した「アルムナイ(卒業生)」や社員による紹介(リファラル)など、同社を転職先として検討する人が自ら登録し、相互に情報交換できるシステムを構築。その集積を「タレントプール」と位置付け、随時応募しやすい環境を整えることで、多様な背景や専門性を持つ人材確保へつなげる狙いだ。
■受け身の採用から転換 多様なルートと継続性
採用応募・選考のプロセスとタレントプールとの関係を図1に示した。登録を希望する人は、北陸銀行、北海道銀行それぞれの採用ホームページに設置されたフォームから必要情報を入力する。過去に勤務経験を持つ人は「アルムナイ登録」、転職を検討している人は「キャリア登録」にアクセスし、氏名や連絡先、現職の職務内容などに加えて「今後受け取りたい情報」を選択する(図2)。
なぜこうした仕組みをつくったのか。北陸銀行人事部の野上剛史部長代理はこう話す。
「地域や顧客の課題を解決するためには、多様なバックグラウンドや他社で培った高い専門性を持った人材の獲得が重要です。競争の激しいキャリア採用市場のなかで、競合せずに採用を進めるため『転職潜在層』のタレント(人材)プール構築が必要だと考えました」
転職採用エージェントなどで紹介される人材は、すでに転職を決めた「転職顕在層」。この段階では他社との競合でオファーが辞退されることも少なくない。転職を決める前の検討段階である「転職潜在層」にアプローチするためには、「受け身の採用方針からの転換が必要」だと野上さんは指摘する。
人材プール構築に重要なのが、採用ルートの多様化だ。これまで出産・育児・介護などで退職した社員に限定していた「再雇用制度」について、退職事由や離職期間などの要件を緩和して「アルムナイ採用制度」に刷新。社員が知人や家族などを紹介する「リファラル採用」を制度化するとともに、新卒採用についても通年採用の周知や採用辞退者への人材プール登録を促していく。
一方で、組織を離れた者へのネガティブな見方は一般社会に根強くある。この点についてほくほくフィナンシャルグループ人事戦略部の平井浩就部長はこう話す。
「新卒入社の生え抜き社員を中心とした従来の『純血主義』のような考え方で組織文化が維持されてきた面はありますが、それが逆に成長の足かせになってきた部分もある。アルムナイ採用などが組織に根付くまで少し時間はかかるかもしれません。しかし多様性を受け容れながら、それを組織のエネルギーに変えていくことが重要だと考えています」
■個に応じた関係づくり カジュアル面談も活用
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。