■連載:人事担当者がわかる最近の労働行政
今年2023年は、最も高い東京都の地域最低賃金が1113円、最低の岩手県が893円となり、全国加重平均は1004円と初めて千円を超えました。さらに岸田首相が8月の新しい資本主義実現会議で、2030年代半ばまでに全国加重平均1500円を目指すと発言したことも話題を呼んでいます。しかしこの最低賃金が千円とか千五百円というのは、今から半世紀前にも飛び交っていた数字です。もちろん、時給ではありません。当時の最低賃金は日給建て表示だったのです。労働省/厚生労働省の『最低賃金決定要覧』各年度版によって過去半世紀の地域最低賃金の推移を見ると、日給表示が原則で、括弧書きで短時間労働者用に時給表示が附記されるという形でした。その後日給表示と時給表示が併記されるようになり、21世紀に入って日給表示が廃止されて時給表示のみとなったことがわかります。
というか、今から半世紀前の1973年というのは、最低賃金はそれまでの業者間協定方式の流れを汲む産業別最低賃金が中心であって、ようやくすべての都道府県で地域最低賃金が設定されたのは1975年度からです。たとえば1973年度には東京都も大阪府も入っていません。この表で、最高値の欄はほとんど東京都ですが、初期には大阪府の方が若干高かったことがあります(正確には、日給表示では大阪が高く、時給表示では東京が高かった)。一方、最低値の欄は、近年はほぼ沖縄県ですが、初期には東北諸県や鹿児島県のこともあり、直近の2023年度は岩手県でした。
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