■制度の延長は定かではない 更新回数、経営状況から総合的に判断
新型コロナウイルス拡大のなか、雇用調整助成金受給中の雇止めは違法との原告の主張が斥けられた事件。期間満了時に、助成金制度の延長が定まっていなかったこと、雇止めまでの1回という更新回数、会社の経営状況から雇止めが、「客観的合理性や社会的相当性を欠いたとはいえない」と判断しています。
■判決のポイント
紙製品の製造会社に原告は、平成30年5月から3カ月の試用期間を経て週3日、1日4時間50分で勤務。1年間の契約で、業務内容は資格や技能を有するものではありませんでした。
会社は緊急事態宣言を受け、令和2年4月ごろから一部の無期雇用を含めパート労働者を休業させます。4月の売上は前年度比29.4%にまで落ち込みました。その間、勤続20年以上のパートにも退職勧奨を行っています。会社は令和2年7月、原告に対し期間満了後、労働契約を更新しない旨を通知しました。
雇用継続の合理的期待の有無について判決では、担当業務が代替可能なこと、1回目の契約更新後に、必ずしも契約更新とならない旨示されていたことを重視。1回という更新回数や雇用期間が2年3カ月であること等を考慮しても合理的期待を認めるのは難しいと述べています。
経営や休業の状況、他のパートへの退職勧奨も考慮。雇用調整助成金については、期間満了2日前に延長を検討する旨の報道がされてはいたが定かではなかったと指摘。期間満了1カ月前に不更新を通知しているなど、総合考慮して違法ではないと判断しています。
なお、原告は記者会見も行っており、会社は名誉・信用を毀損されたとして、損賠賠償を求める反訴を提起しましたが、コロナ禍の雇止めという社会的関心事であり、原告は事実に沿って見解、意見を述べるにとどまり、本件本訴を提起したことは「無形的利益の侵害行為であるということはできない」としました。
■判決の要旨 雇用期間が1年であると 認識していたというべき
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