明治安田生命保険(東京都千代田区)は来年度から、約1万人の内勤職員全員を対象に「価値創造特別手当」を支給することを決めた。年収換算で4%程度の賃上げを見込む。長期経営計画で定める社会的価値・経済的価値の向上に向けた事業や取組みを長期的視点で評価し、月給・賞与に次ぐ従業員への「第3の支給」として制度設計。個々の従業員が価値向上を日々の業務に落とし込み、自分事として捉える意識づけを促すことで計画を加速させる狙いだ。人事部人事制度グループの山崎潤グループマネジャーに詳しく聞いた。
■長期的な視点で報酬 価値創造、自らの業務で
支給は年1回、8月を予定。各従業員に年収の4%程度となる数十万円を特別手当として、賞与とは別に支給する。ポイントは「長期的な視点で仕事に取り組むインセンティブ」と山崎マネジャーは指摘し、こう続ける。
「契約者を構成員とする相互会社として、長期安定的に保険サービスを提供するのが使命です。10年計画で定める社会的価値と経済的価値の向上(図)に処遇を直接紐づけることで、目標に向けたモチベーションの向上や自発的な行動に繋げていきたい。株式会社であれば株式報酬制度などがありますが、今回、相互会社らしい制度として従業員向けに複数年度にわたる評価報酬制度をつくりました。なお役員向けには中長期の業績報酬制度が既にあります」
同社は2020年、10年後に目指す姿をまとめた「MY Mutual Way 2030」を策定し、3年ごとに中期経営計画を定めている。「価値創造報酬制度」では、中期経営計画での3年間の取組みを会社全体として評価し、次年度以降の報酬額に反映させる仕組みだ。
一方、経営計画で定められた目標は、現場で働く従業員にとって日々の業務との繋がりを意識しづらいものがあることも少なくない。山崎さんは今回の制度導入の狙いについてこう強調する。
「会社が目指す価値創造に向けたプロジェクトがどのように自分の業務と関係しているか、うまく理解できていない従業員もいるかもしれません。しかし、一つひとつの業務の多くの積み重ねの上に価値創造がある。会社の成長に自分の業務が関わっているという繋がりを、それぞれが落とし込むためにも今回の報酬制度があります。そうした研修や社内勉強会も企画していく予定です」
来年度から始まる次の中期経営計画で目指す、価値向上に向けた全社的取組みを定量評価する指標の作成を、現在進めているところだという。
■自治体と連携し地域活動 身近な生保が目指す姿
同社の10年計画で目指す社会的価値と経済的価値の向上とは、具体的にどんなことを表しているのだろうか。
「ひとに健康を、まちに元気を。」最も身近なリーディング生保へ――という「めざす姿」にも示されているように、全社横断的に推進する「みんなの健活プロジェクト」「地元の元気プロジェクト」の2つがその一例だ。
未病段階での健康増進型商品や、病気の予防・早期発見プロセスを支援するサービスなどを実施する事業を軸とした「みんなの健活プロジェクト」では、健康状態を気軽にチェックできるイベントも全国で展開。蓄積された健康診断データの分析や健康状態改善の促進などを通じ、認知症や介護といった高齢化のリスク低減も進めている。
「地元の元気プロジェクト」は、地域の橋渡し役として「社会的なつながり」を提供。①地域住民の健康保持・増進、②地元への愛着と暮らしやすさの提供、③地域を支える企業・団体の持続的成長――の3つの領域で取組みを展開し、これまでに全国で800以上の自治体との連携協定の締結や地元応援募金の寄付、日本プロサッカーリーグや日本女子プロゴルフ協会との連携などを通じて地域づくりへの貢献を進めている。
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