金曜日, 11月 22, 2024

発達障害の特性(深沢孝之)

新・働く人の心と体の心理学 第58回 著者:深沢孝之

発達障害の話題は、職場のメンタルヘルスの分野では常に出てきます。本連載でも度々取り上げましたし、メディアでも時々登場します。社員研修などで、専門家を呼んで従業員に勉強させている企業や団体もあり、私も時々呼ばれています。

コミュニケーションがうまくいかない、指示が通りにくい、マイペースで周りに合わせられない、ミスが多い、何を考えているかわからない、自分勝手といった部下や同僚に悩む管理職は多いようです。私のところにも、時折管理職が相談に来られます。

管理職だけではありません。若手や現場の方からも、そのような特徴の上司がいて、ほとんどパワハラといってもいいような扱いをされてメンタルが壊れたといった相談もよく寄せられます。

しかし、発達障害の特性がある人たちが全員、医師に診てもらって自閉スペクトラム症とか注意欠如・多動症と診断されることはありません。診断されるのは、例えばうつ病で休職していて、精神科に通院している人とか、自分の生きづらさに気づいて自ら精神科や専門家を訪ねる人くらいでしょう。ほとんどは、周囲から「発達障害を疑われている人たち」です。 一方、発達障害の特性のある人たちは問題だらけかというとそうではなく、そういう特性を持つ人が新しい発想の企画や製品開発をしたり、イノベーションを起こしたという話もよくあります。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなど先端的企業、IT系産業の創業者に発達障害の特徴を持つ人が多いといわれています。

結局、発達障害は回復不能な病気や障害なのでしょうか、それとも個性や才能なのでしょうか。

最近は、「障害という言葉はその当事者が必要な時に使って、通常は使わないようにしよう」という考えが強くなっています。カギは「スペクトラム」という言葉にあります。虹の色の変化のような連続体という意味ですが、「誰もが多かれ少なかれ、何らかの発達特性を持っている」ものであり、病気や障害となるのは状況次第ということです。

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